県立熊谷図書館では、2階ロビーにおいて1月から2月までの間、下記のテーマで資料展示を行っています。
所蔵資料展示目録(平成17年度第3回)2005/2006 Winter
山内一豊の妻
2006年のNHK大河ドラマの主人公は、山内一豊の妻・千代です。数ある戦国武将の中で、ずば抜けた名門の出身でもなく、戦場で華々しい活躍をしたわけでもない山内一豊を、献身的な愛と機知に富んだ対応で土佐二十万二千石の太守にまで出世させたとされる千代は、戦前の尋常小学校の教科書にも採り上げられて、妻の模範と称えられてきました。
エピソードに事欠かない女性でありながら、出身地・名前などに諸説があり謎が多いとされる山内一豊の妻とは、いったいどんな女性だったのでしょうか。今回は、山内一豊と妻・千代の逸話を伝える史料や、戦国乱世を生きた女性たちに関する資料をご紹介します。
〈リストの見方〉
書名・副書名/叢書名/著者・編者/出版社/出版年/請求記号
※館内利用と付記したものは、図書館内でご利用ください。
※雑誌記事も多数掲載しました。論文名後ろの( )内に記したのが、掲載誌及び巻号です。
【千代の素顔】
夫によく仕え、質素倹約の生活を送った千代。まな板が買えず桝を代わりに使ったとか、美しい髪を切ったお金で来客をもてなしたなど、貧困の中でもつつましくやりくりする女性でした。また、大切にとっておいた小さな布切れを寄せ集めたパッチワークで見事な色合わせの小袖を作ったなど、縫い物がとても上手だったといいます。その千代に、裁縫や書道・礼儀作法を教えたのが実は一豊の母であり、‘ぜひ息子の嫁に’と望まれて、一豊と結ばれたとされています。
- 『山内一豊の妻』 楠戸義昭著 新人物往来社2005 289.1ケン
- 『検証・山内一豊伝説』 渡部淳著 講談社2005 289.1ヤマ
- 『山内一豊と千代』 田端泰子著 岩波書店2005 289.1ヤマ
- 『山内一豊のすべて』 小和田哲男編 新人物往来社2005 289.1ヤマ
- 『日本の武将 70 山内一豊』 山本大著 人物往来社1966 281.08ニ
- 『戦国の女性たち』 小和田哲男著 河出書房新社2005 281セン
- 『日本の肖像 第6巻』 毎日新聞社1989 D281ニ
- 『戦国城と女 第1巻〜第3巻』(毎日グラフ別冊)毎日新聞社1990 210.47セ
- 『人物日本の女性史 第4巻 戦国乱世に生きる』 集英社1977 281ジ
- 『千代 〜山内一豊の正室〜』(歴史読本2005年2月号) 福崎正著 雑誌
- 『山内一豊の妻 千代』(歴史と旅1992年6月号)辻ミチ子著 雑誌 館内
- 『千代女 〜台所から操縦した亭主の出世競争〜』(歴史と旅1995年2月号) 岸宏子著 雑誌 館内
- 『妻のおかげで有名人』(Yomiuri Weekly2002年9月29日号)山室恭子著 雑誌 館内
- 『歴史をつくった女性たちJ山内千代』(潮2003年4月号) 童門冬二著 雑誌
- 『良妻の鑑はどのような女性だったのか』(潮1988年9月号) 泉秀樹著 雑誌 館内
- 『賢妻に馬喰われた山内一豊』(潮1969年11月号) 永井路子著 雑誌
- 『内助の悔い 〜山内一豊の妻〜』(歴史読本臨時増刊1980年3月) 田中富雄著 雑誌 館内
- 『県史 39 高知県の歴史』 荻慎一郎他著 山川出版社2001 218.4コウ
- 『郷土史事典 39 高知県』 山本大編 昇平社1983 218.4キ
- 『郷土資料事典 39 高知県』 人文社1998 291.093キヨ
- 『土佐 その風土と史話』 平尾道雄監 高知県1973 218H67
- 『高知縣史 上・下』 高知縣史編纂会1951 218.4コウ
- 『土佐物語』 岩原信守校注 明石書店1997 218.4トサ
- 『山内一豊入国400年共同企画 企画展・講演会・シンポジウム報告書』 山内一豊入国400年共同企画実行委員会編刊2004 218.4ヒト
- 『郷土資料事典 25 滋賀県』 人文社1997 291.093キヨ
- 『県史 25 滋賀県の歴史』 畑中誠治他著 山川出版社1997 216.1シカ
- 『古寺巡礼京都 10 妙心寺』 安東次男・梶浦逸外著 淡交社1977 185.9コ
【史料にみる「馬を買う話」】
千代の内助の功を伝えるエピソードは様々ありますが、最も有名なのが馬を買う話でしょう。仙台から売りに来た名馬を手に入れるために、千代が鏡箱の底に大事にため込んでいた黄金を一豊に渡して馬を買わせ、馬揃えの際に大将(信長)のお褒めにあずかり、出世のきっかけになったというものです。
このエピソードは、江戸時代中期に新井白石の『藩翰(はんかん)譜(ふ)』や湯浅常山の『常山(じょうざん)紀談(きだん)』、室鳩巣の『鳩(きゅう)巣(そう)小説(しょうせつ)』を通じて広く世間に知られるところとなり、明治の頃には尋常小学校の教科書でも採り上げられました。
- 『新編藩翰譜 第3巻』新井白石編 人物往来社 1977 R288.2ア 館内
- 『有朋堂文庫 第31 常山紀談 全』有朋堂書店 1926 081ユ
- 『常山紀談 上・中・下』(岩波文庫) 湯浅常山著 岩波書店 1938 B154ユ
- 『続史籍集覧 第6冊』 近藤瓶城編 臨川書店 1930 210.08ゾ
- 『定本名将言行録 上・中・下』 岡谷繁美著 人物往来社 1967 281.08オ
- 『日本教科書大系 近代編第2巻 修身2』 講談社 1964 R375.9ニ 館内
- 『日本教科書大系 近代編第7巻 国語4』 講談社 1968 R375.9ニ 館内
◆コラム◆黄金をくれたのはお父さん?お母さん?
名馬購入の資金となったこの黄金、『藩翰譜』と『常山紀談』では嫁入りの時にお父さんが持たせてくれたとしていますが、『鳩巣小説』では夫の急用の時に使うようにとお母さんがくれたとしていて、お金の出所に食い違いが見受けられます。また、北国出陣のための軍備を整えることができず、自殺するしかないと思い詰めている一豊を助けるために黄金を差し出したとする説(※『治国寿夜話』)もあり、はっきりしたことは分かっていないとされています。
※ 『治国寿夜話』・・・成立年代・作者ともに不明で、国会図書館と内閣文庫に
写本があるのみとされています。
【戦国乱世の女性たち】
一豊・千代夫妻の生きた戦国時代は、真の実力を備えた者だけが勝利者となった実力の時代。各地に多くの戦国武将が林立し、男たちはその生涯の大半を戦場で過ごしていました。留守がちの夫に代わって城内のことをとりしきるのは妻たちで、中には、戦死した夫に代わって領国経営に乗り出す‘女戦国大名’もいました。籠城戦では、鉄砲玉を作ったり城郭補強にあたるなど、働き者の妻たちは戦国大名にとってはたくましいパートナーでした。
また、1549年にフランシスコ・ザビエルが来日して以来、外国人宣教師たちがキリスト布教のためにたびたび日本にやって来ました。布教のかたわら彼らが残した記録は、当時の日本を知る貴重な資料とされており、中でもポルトガル人宣教師ルイス・フロイスは、ヨーロッパと日本を多方面から比較した詳細な記録を残しました。戦国時代の女性についても詳しく知ることができます。
- 『戦国史事典』 戦国史事典編集委員会編著 秋田書店1980 R210.47セ 館内
- 『クロニック戦国全史』 講談社1995 R210.47ク 館内
- 『日本史の中の女性逸話辞典』 中江克己著 東京堂出版 2000 281ニホ
- 『雑兵物語 おあむ物語』中村通夫校訂 岩波書店1943 B210.5ゾ
- 『日本史女性100選』 女性史研究会著 秋田書店1973 281.09ニ
- 『戦国の異能人』 戸部新十郎著 PHP研究所1994 B210.47セン
- 『戦国夫婦物語』(歴史研究2002年1月号) 雑誌 館内
- 『戦国名将の夫人たち』(歴史読本1981年11月号) 雑誌 館内
- 『物語女たちの戦国史』(歴史読本臨時増刊1980年3月)雑誌 館内
- 『ヨーロッパ文化と日本文化』ルイス・フロイス著 岩波書店1991 B210.48ヨ
- 『十六・七世紀イエズス会日本報告集 第V期第7巻』 松田毅一監訳 同朋舎出版1994 198.2ジ
- 『フロイスの見た戦国日本』 川崎桃太著 中央公論新社 2003 210.48フロ
- 『完訳フロイス日本史 全12巻』 ルイス・フロイス著 松田毅一他訳 中央公論新社2000 B210.48フ
- 『フロイスの日本覚書』 松田毅一著 中央公論社 1983 210.4フ
- 『南蛮人戦国見聞記』 クーパー 会田雄次編 人物往来社1967 210.47ナ
- 『大航海時代叢書 11巻』 岩波書店 1965 298ダ
いかがでしたか? 歴史・哲学の専門館である県立熊谷図書館には、ここに挙げた他にも多数の図書や雑誌が揃っています。どうぞご利用ください。