【Web資料展】「100年前の資料で見る 埼玉と昭和100年」(令和7年度)

はじめに
巨大な飛行船を格納した所沢飛行場(大正年間)
木橋時代の戸田橋(昭和初期)
大規模設備を誇る日本煉瓦工場(深谷市 昭和初期)
令和8年(2026)に、日本は昭和元年(1926)から数えて100年を迎えます。
「『100年前』の埼玉県はどのような県だったのか」と聞かれた時、
あなたは何を思い浮かべますか?
関東大震災や熊谷の大火、続く水害の爪痕が残る景色でしょうか。
鉄道を中心とした交通網の発達や、東京近郊の都市化が進んだことにより発展の兆しを見せる社会の様子でしょうか。
それとも、雄大な山林の風景でしょうか。
今回のウェブ資料展では、この「昭和100年」にちなみ、当館所蔵の出版・発行から100年が経過した地域資料をご紹介します。
金融恐慌や不況、進む首都近郊化。激動の時代となった昭和という時代。その「始まり」。
多岐に渡り収集された100年前の資料は、断片的ではありますが、当時の埼玉県の様子を現代に生きる私たちの前に鮮やかに示してくれます。
古いからこそ、新しい発見に繋がる。まさしく「温故知新」の出会いをお楽しみください。
展示資料のサムネイル画像をクリックすると、『埼玉県立図書館デジタルライブラリー』掲載の大きな画像をご覧いただけます。
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県政の様子
100年前の県政の断片が見える資料をご紹介します。
特に統計資料では、100年前に重要視されていた物事が項目立てから見えてきます。
S310/サ『自治資料 第4輯』(埼玉縣内務部 1925)
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- 関連資料:古写真『県会議場風景』(1913)
同年建替えられた県会議事堂で行われている会議の様子を写した一枚です。
議員たちの服装等からも時代を感じることができます。 - 関連資料:S312/オ『大沢県政の指向』(大藤 暉一 1950)
昭和25年(1950)当時の埼玉県知事、大沢雄一の就任から1年後に発行された、公約の履行状況に関する資料です。
県民の県政に対する理解を深める目的があったことが伺えます。 - 関連資料:古写真『昭和3年普選第1回の県会議員選挙結果報告書類』
昭和3年(1928)に行われた普通選挙結果の報告書類を撮影した古写真です。
埼玉県北葛飾郡の県会議員選挙だったことが内容から伺えます。
S343/サイ『埼玉県財務関係諸規程』(埼玉県庶務課 1926 )
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- 関連資料:S342/サイ『埼玉県の財務諸表』※リンク先は平成20年度
近年の県の財務諸表はデジタル行政資料として収集されています。
現在平成20年度から令和2年度版まで、デジタルライブラリーに収録済みです。
S498/サ『郡市町村別乳幼児(五歳以下・一歳以下)死亡率表』(埼玉縣保健調査會 1926)
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- 関連資料:雑誌『関東之衛生』(関東之衛生社)※リンク先は96号
関東之衛生社が発行していた保険・衛生に関わる雑誌です。
当時県内に存在していた医院の紹介などが掲載されています。
デジタルライブラリーには96号から106号まで収録されています(一部欠号あり)。
古写真『県立図書館印の押してある開館当初の蔵書』(大正後期)
- 関連資料:古写真『大正13年創立された県立埼玉図書館』
昭和3年(1928)に撮影された古写真です。建築当時の様子を知ることができます。
建物には「鳳翔閣」という名称があります。
市町村の様子
地図や絵図、町村市、要覧。市町村の様子を知ることのできる資料は様々です。
100年前の各市町村はどのような状況だったのか。デジタルライブラリーに収録されているものから、一部をご紹介します。
S294.9/ア『長瀞鳥瞰図』(青木 清一 1925)
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- 関連資料:古写真『長瀞の釣り堀風景』(昭和初年頃)
観光地として開かれている長瀞の川辺を写した古写真です。
多くの釣り人が写っており、観光地として賑わっている様子が伺えます。
S297.9/ヒ『日勝村誌』(日勝村 1925)
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- 関連資料:S318.7/ミ『南埼玉郡制誌』(南埼玉郡役所 1924)
近隣の村を含めた大字や役場位置の一覧を始め、群の地勢や沿革が記載されています。
村誌よりも広い視点の情報を得ることが可能です。
S318.23/サイ『埼玉縣比企郡勢要覽 大正13年』( 埼玉縣比企郡 1925)
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- 関連資料:S293.9/タマ『玉川村全図』(玉川村 1958(調製))
高度成長期に入った昭和30年頃の比企郡玉川村(現在のときがわ町の一部)の全図です。
学校や役場などの主要施設も地図記号と共に記載されています。埼玉県の略図も収録されており、県内の比企郡の位置や比企郡の中の玉川村の位置をそれぞれ知ることができます。
S343/サイ『埼玉県北足立郡大正震災誌』(北足立郡 1925)
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- 関連資料:古写真『傾いた浦和刑務所の建物』(1923)
瓦礫の山の後ろに一目見て傾いていると分かる建物が写っている、関東大震災当時の古写真です。
デジタルライブラリーには他にも震災当時や復興の様子を写した古写真が収録されています。
暮らしの様子
100年前の神社、町や学校等、身近なコミュニティの様子が垣間見える資料をご紹介します。
当館デジタルライブラリーには古写真も含まれており、当時の様子を視覚的に確認できます。
S175/ミ『三峯神社写真帖』(三峰神社社務所 1925)
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- 関連資料:S175/ウ『三峰山御開扉参詣群衆之図』(歌川豊国/画 〔18--〕)
歌川豊国による3枚続きの浮世絵です。デジタルライブラリーでは高解像度のまま拡大をして、細部まで閲覧が可能です。
三峯神社の由緒を感じさせるとともに、色鮮やかに描かれた人々の様子から当時の参詣のあり方を伺えます。
S385.2/カ『川越郷土簓獅子舞由来記』(川越郷土簓獅子舞後援会 1925)
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- 関連資料:古写真『郷里の秋祭を楽しむ翁』(1926)
埼玉の3偉人のひとり、渋沢栄一氏が八基村(現在の深谷市の一部)の秋祭の獅子舞を楽しんでいる様子を写した古写真です。
中央に写っている渋沢氏はもちろん、周囲の村民の様子からも楽し気な様子が伝わってきます。
S376.7/ウ『瑶沙原誌 〔第1編〕』(浦和高等学校学友会 1925)
- 関連資料:S376.6/カ『會報 第21号』(川越中學校學友會 1925)
『瑶沙原誌 〔第1編〕』とほぼ同時期に発行された川越中学校学友会の会報です。表紙や目次から開校15周年記念誌であることが伺えます。
寄稿文等多数の記述の他、校舎や歴代校長の肖像写真も収録されています。 - 関連資料:雑誌『埼玉教育』※リンク先は第222号
埼玉県教育会が発行していた雑誌で、改題前は『埼玉縣教育會雜誌』という題でした。1906年頃から存在し、教育学に関わる論文などが掲載されています。
デジタルライブラリーには改題前のものから昭和10年5月号まで収録されています(一部欠号あり)。
雑誌『埼玉正論』(埼玉正論社 1925創刊)
- 関連資料:雑誌『鴛鴦文學』(鴛鴦文學会)※リンク先は2号。
北埼玉郡忍町の鴛鴦文學会により発行されていた文学雑誌です。
明治33年(1900)頃の雑誌のため、埼玉正論と見比べると文学・芸術分野の変遷が伺えます。
デジタルライブラリーには2号から4号まで収録されています。
古写真『梅の名所越生の梅林』(大正末期)
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- 関連資料:『【WEB資料展】「埼玉の自慢したい風景」』
埼玉県立浦和図書館(閉館)で実施した「自慢したい風景」の展示 (2012年度に開催)をWEB資料展として再現したものです。
風景30か所の選定は、平成12年に埼玉新聞社より刊行された「埼玉ふるさと自慢100選-県民投票で選ばれた21世紀に残したい埼玉県の風景-」で上位になった風景を中心に、当館所蔵古写真の中から紹介できる風景を選びました。越生の梅林も含まれています。
古写真『川越市営職業紹介所』(昭和初年)
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昭和初年頃に撮影された川越市営職業紹介所の古写真です。 当時の県の社会福祉事業は発展の最中でした。その事業の中のひとつとして、県内には13ヶ所の職業紹介所が設置されました。 本写真の営業所もその内のひとつに当たります。 |
- 関連資料:『資料展「川越百歳 ~川越市市制100周年記念展示~」』
大正11年(1922)12月1日、川越町は仙波村と合併するとともに、県内初の市制を施行し「川越市」となりました。川越の百寿を記念して2022年4月に開催された資料展です。
絵葉書や川越を舞台としたアニメとコラボをした観光マップ、川越の情景模型等様々な資料を展示しました。
農林業の様子
100年前の埼玉でも、農林業を支えるためにさまざまな団体が組織され、活動していました。
統計や古写真など、当時の様子を知ることのできる資料をご紹介します。
S294/サイ『埼玉縣山林會報 第9号』(埼玉縣山林會 1926)
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埼玉県山林会が発行した会報の第9号です。 |
- 関連資料:『大秩父山嶽図』(JCC調査部 1933)
奥秩父・奥多摩・大菩薩を含んだ7万5千分の1の縮尺の地図資料です。
林道を含んだ小径や里道の表記はもちろん、山小屋などが記号で記されています。高度尺が色分けで表されており、視覚的に分かりやすい資料です。
S611.5/ノ『農家保険組合奨励概況 農務要報 第1号』(埼玉縣内務部 1925)
- 関連資料:雑誌『更生埼玉』(埼玉県農村更生協会)※リンク先は創刊号
埼玉県農村更生協会の機関誌です。主に農村の経済更生にスポットを当てた内容になっています。
デジタルライブラリーには創刊号から第48号まで集録されています(一部欠号あり)。
S612/サイ『埼玉縣之農業 農務要報 第3号』(埼玉縣内務部 1926)
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- 関連資料:SA37/シン『新編農業教科書 1巻』『新編農業教科書 2巻』(埼玉県師範学校同窓会/編 杉本光文館 1913)
当時の高等小学校児童用の農業教科書として編纂された資料です。1巻と2巻でそれぞれ対象学年が異なります。
農業・農学の基礎的な知識に加え、2巻では農事試験場や農会についても触れられており、児童用ながら専門的な内容になっています。
S615/サイ『採種圃の経営 農務要報 第4号』(埼玉縣内務部 1926)
- 関連資料:古写真『大正期の大豆原種詰め込み作業(県農事試験場)』(大正時代)
大正期の県の農事試験場での一枚です。作業が複数の人間の手で行われていたことが分かります。
農事試験場では作物栽培や品種改良、肥料の研究等様々な試験研究が行われていました。
商工業の様子
商工業には様々な種類がありますが、今回は足袋と蚕糸業、一部の商工会についての資料をご紹介します。
100年前の商工業の断片をご覧ください。
S589/デ『足袋の話 足袋から見た経済生活』(出井 盛之 1925)
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- 関連資料:古写真『たびの街行田の風景』(大正元年)
荷車の往来や働く人々の様子が垣間見える古写真です。
行田たびは明治期には機械の導入や同業組合の設立等の発展があり、その発展が続いていることが伺えます。
S630/サ『埼玉県之蚕糸業』(埼玉県蚕業試験場 1925)
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- 関連資料:S630/サイ『最新蠶絲要綱』(埼玉縣蠶業試験場 1931)
時代の流れに伴い、経営、技術の両方面での改善・進展を目指すため基礎的資料として編纂された資料です。
巻末附録として、当時の養蚕に関わる統計や生糸等の相場が含まれています。
S670.3/タ『本庄商工写真名鑑』(田村伊勢松 1926)
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- 関連資料:古写真『県庁落成を祝う浦和市商店街』(1951)
昭和20年代の浦和市(現さいたま市)の商店街の様子です。看板には「高砂共栄会商店街」の文字が確認できます。
県庁落成記念の大売り出しが行われており、賑わいを見せています。
S670.3/フ『豊岡商工案内』(豊岡商工会 1925)
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- 関連資料:S670/カ『川越商工案内』(川越商業会議所 1911)
こちらも商工案内の資料です。
巻頭には写真と川越全図が収録され、豊岡商工案内と同様に町全体の様子を伺えます。
例言から、川越特設電話の第三回加入者工事の完成や、川越織物市場及び織物品評会開会を記念して発行されたことが分かります。
おわりに
『埼玉県立図書館デジタルライブラリー』では今回ご紹介した資料以外にも、貴重な資料が多く収録され、随時更新されています。まるで地層のように積み重なる時と記録を、いつでも、どこでもお楽しみいただけます。
資料詳細に記載されている条件に従っていただければ、自由に利用可能です。
各種雑誌への掲載や地域に関する授業の資料としても、ぜひ、ご活用ください。
参考文献
- S175/ミツ『三峯神社』(沼野勉 さきたま出版会 2018)
- S175/ミツ『三峯神社』(三峯神社社務所 三峯神社社務所 〔200-〕)
- S201/サ『新編埼玉県史図録』(埼玉県/編 埼玉県 1993)
- S201/サ『目でみる埼玉百年』(埼玉県/編 埼玉県 1971)
- S312/オ『埼玉県政と知事の歴史的研究』(小山博也/著 新興出版社 1996)
- S314/サ『埼玉県議会百年史』(埼玉県議会 埼玉県議会 1980)
- S317/サ『埼玉県行政史 第2巻』(埼玉県/編 埼玉県 1990)
ミニ展示「比べて発見! 昭和100年と埼玉の現在」
Web資料展との関連展示です。
100年前の資料を集めたWeb資料展とは一転し、現在の埼玉県の姿が分かる資料を展示しています。
Web資料展の資料と様々な視点から見比べられるよう、統計資料や雑誌、旅行ガイド等、幅の広い分野の資料を集めました。
展示スペースにはWeb資料展のページへアクセスできる二次元コードも掲示中です。
お手持ちのスマートフォンを使って、100年前と現在をぜひ比較してみてください。
ミニ展示「比べて発見! 昭和 100 年と埼玉の現在」(埼玉資料)
開催期間
【埼玉資料室】令和7年10月25日(土曜日)~12月3日(水曜日)まで
【浦和分室】令和7年12月9日(火曜日)~令和8年1月31日(土曜日)まで
(休館日を除く)






















