劣化の原因を知る
日常の取扱いによる主な劣化原因
取り出し方《無理に引き出す》 |
もどし方《無理に押し込む》 |
置き方《不安定に置く》 |
運び方《手元から落とす》 |
めくり方《乱暴にページをめくる》 |
コピーの取り方《ノドを押しつける》 |
雨&水《水に濡らす》 水分は、紙の天敵です。適切な処置をしても完全には元に戻りません。 |
汚す《食べかす,汚れた手,書き込み》 いずれも本を傷めます。 |
間違った修理による劣化の原因 "強力な材料は構造のバランスを壊す"
セロハンテープの使用
一度貼るとはがしにくく、時間の経過により、劣化し変色したり固くパリパリになり、はがれる上に粘着層が残ります。
本の修理には、セロハンテープを使用しません。
強力すぎる材料の使用
強力な接着剤は、ぬった部分は丈夫でも、強度の差ができ、いずれ他の部分まで壊します。
やり直しができないため、再修理が困難になります。
環境や本の構造による主な劣化原因
紫外線(日光・蛍光灯)
日光や一般的な蛍光灯には、紫外線が含まれています。リグニンを特に多く含むパルプを使用している紙は、光にさらされると紫外線などの影響をうけ、黄色く変色してしまいます。
本を置くときは、直射日光があたる場所をなるべくさけ、できるだけこまめな消灯をこころがけるとよいです。
カビの発生
『IFLA図書館資料の予防的保存対策の原則』(日本図書館協会 2003)によれば、「空気中やものの上には、カビの原因となる菌の胞子が常に存在し、条件が整えば場所を問わず生育する。一般に、湿気があって(相対湿度65%以上)、暗く、空気の流れが悪いところがカビの生育にとって理想的な環境である。」とあります。
カビを発生させないようにするためには、十分に空気を循環させること、温湿度管理、カビの栄養源である埃が溜まらないよう日頃から清掃することが不可欠です。
※カビの発生や除去については、国立国会図書館「資料の保存」「カビが発生した資料をクリーニングする」のページをご参照ください。
酸性紙の劣化
酸性紙は1850年代以降に、製紙の過程でにじみ止めの定着材として硫酸アルミニウムを使用した紙です。紙自体に含まれる酸によって紙の繊維がもろくなり数十年でボロボロになり、この現象を酸性劣化といいます。図書館にある近代の紙資料の多くが酸性紙を使っているため、多くの図書館で酸性紙劣化資料への対応が課題になっています。
ここ10年では、出版物の90%以上に中性紙が使われるようになっています。(参考『防ぐ技術・治す技術-紙資料保存マニュアル-』(日本図書館協会 2005))