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図書館ブログ

2025年12月20日

文化講座「こんなふうに書いてきました」を開催しました!

こんにちは。久喜図書館 芸術・文学資料担当です。

11月8日(土曜日)に久喜図書館1階視聴覚ホールで、文化講座「こんなふうに書いてきました」を開催しました。

「こんなふうに書いてきました」チラシ表.jpg

今回の文化講座では、埼玉県在住で詩人・小説家として活躍されている向坂(さきさか)くじらさんを講師としてお迎えしました。
1作目、2作目として発表された小説が昨年・今年と連続で芥川賞候補に選ばれるなど、今まさに文学界で注目されている向坂さん。会場には、幅広い年代のファンが集まりました。

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講座の前半では、向坂さんの創作の動機、作品制作のプロセスについてお話しいただきました。向坂さんの創作メモもご紹介いただき、画面いっぱいに映し出されたメモに注目が集まる場面も。
また、詩を鑑賞する時間も設けられ、向坂さん直々の解釈を聴きながら詩に触れる貴重な体験となりました。

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講座の後半では、客席参加型の創作体験(ミニ・ワークショップ)を行いました。

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「実際に詩を作ってみよう」というこのワークショップ。短い創作時間でしたが、皆さん真剣に鉛筆を走らせていました。

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創作後、何人かの方が作成した詩を発表、向坂さんからコメントをいただきました。

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質疑応答の時間では、会場・配信共に次々と質問が寄せられました。
参加者からの熱心な質問に、丁寧にお答えいただきました。

講座終了後には、当館司書から調べ方案内「詩について調べる」をご案内いたしました。

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調べ方案内「詩について調べる」は、久喜図書館内で配布中のほか、ウェブサイトでも公開しています。2階公開図書室で開催していた資料展「「シ。」詩の楽しみかた」のリストと併せて、調査にお役立てください。
調べ方案内 Milestone(久喜図書館) No.78「詩について調べる」
【久喜】資料展「「シ。」詩の楽しみかた」

参加者からは「詩に苦手意識があったが、お話を聞いて色々な詩の本を読みたいと思った」「詩を作ってみたくなりました」などの感想をいただきました。
向坂様、そしてご参加くださいました皆さま、ありがとうございました。

2025年12月17日

資料展「舞台に咲く日本の心-伝統芸能の世界」開催中!(県立久喜図書館)

こんにちは、新聞・雑誌担当です。

現在、県立久喜図書館2階公開図書室では、資料展「舞台に咲く日本の心-伝統芸能の世界」を開催中です。

展示コーナー全体写真

日本の伝統芸能は、長い歴史の中で継承され、多くの人々を魅了し続けています。

また、歌舞伎や能楽等がユネスコの「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に登録されるなど、世界的にも高い評価を得ています。

資料展では、県立図書館の所蔵資料等を通じて、歌舞伎、能楽、落語、文楽、県内の民俗芸能について、演者、衣装、小道具、音楽、舞台、台本など、様々な観点から魅力をお伝えする資料を展示しています。

この記事では、各部門の展示内容について詳しく紹介します。展示している資料のリストはPDFファイルのダウンロード、外部サイト「ナラベル」で確認することもできます。詳細は下記の資料展ページをご確認ください。

【久喜】資料展「舞台に咲く日本の心-伝統芸能の世界」

展示資料は、発行後2年を経過した雑誌を除き貸出ができます!

また、県内の市町村立図書館に取り寄せが可能です。お近くの図書館にお問い合わせください。

1.歌舞伎

歌舞伎は、江戸時代の初期、出雲の阿国による、当時巷にみられたかぶき者やキリシタンの風俗を取り入れた「かぶき踊り」が始まりとされています。幕府の取り締まりに柔軟に対応しながら、庶民から絶大な人気を得ました。

歌舞伎の歴史や、名跡「市川團十郎」などの役者に関する本、人気の演目「勧進帳」のDVDなどを展示しています。

2025年にヒットした歌舞伎がテーマの映画をきっかけに、興味を持った方もいらっしゃるのではないでしょうか?展示資料を読む(観る)と、歌舞伎への理解が深まります!

展示棚歌舞伎展示棚歌舞伎

2.能楽(能/狂言)

能楽は奈良時代に中国大陸から伝わった「散楽(さんがく)」がルーツとされ、能と狂言どちらも能舞台で上演されます。

基本的な歴史や両者の違いがわかる資料から、能と狂言で使われる面や楽器のことがわかる資料、人気の狂言師にスポットを当てたドキュメンタリー番組のDVDなどがあります。

初めての鑑賞に役立つポイントが解説された資料もありますので、舞台のDVDとセットで借りてお家で鑑賞するのも楽しいですよ!

展示棚(能楽)

3.落語

落語のルーツは、室町時代末期から安土桃山時代にかけて戦国大名に仕え、世情を伝える役割を担った「御伽衆(おとぎしゅう)」とされています。

舞台上では一人の演者が、語りと身振りで表現しています。

名作ネタのあらすじがわかる資料、噺家の著書や伝記、実際の寄席で上演された話芸のCDDVDから、噺家が高座に上がる時に流れる出囃子を集めたCDもあります。

年末年始に落語で笑い納め/初めはいかがでしょうか?

展示棚(落語)

4.文楽

文楽(人形浄瑠璃文楽)は、語り・音楽・人形が一体となった人形芝居です。現在の形は江戸時代に大阪で生まれ、竹本義太夫の義太夫節と近松門左衛門の作品のコンビにより、多くのヒット作が生まれました。人気の演目が歌舞伎化されることもあり、歌舞伎とは互いに影響を与えながら発展したそうです。

入門書や各演目の研究書、人間国宝四世竹本津大夫直筆の床本(台本)を収録した資料、国性爺合戦など人気演目のDVDを展示しています。

語りの太夫、音楽の三味線奏者、巧みに人形を操る人形師など、それぞれに注目してお楽しみください。

展示棚(文楽)

5.埼玉県の伝統芸能

県内には多くの伝統芸能があり、各地域で大切に受け継がれています。今回は県立図書館に所蔵している図書資料や映像資料の一部を展示しています。

先日「神楽」が、ユネスコ無形文化遺産へ提案されることが決定しました。県内からは

・「鷲宮催馬楽神楽」(久喜市)

・「玉敷神社神楽」(加須市)

2つが含まれております!

こちらの神楽に関する資料も展示していますので、是非ご覧ください。

展示棚(埼玉)展示棚(埼玉)

また、展示期間中ガラスケースでは、神楽衣装(県立歴史と民俗の博物館教育普及資料)も展示しております!

ガラスケース展示ガラスケース展示

皆様のご利用、ご来館をお待ちしています!

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資料展「舞台に咲く日本の心-伝統芸能の世界」

期間:令和7122(火曜日)~令和821(日曜日)(休館日を除く)

場所:埼玉県立久喜図書館 2階公開図書室

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2025年12月16日

こんな本あります!ー久喜図書館の書棚からー

こんにちは。久喜図書館です。

このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。

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さて、今月は...

■No.1■

『源氏物語 現代語訳書誌集成 (佐藤由佳/著 新典社 2020)

<所蔵館:久喜図書館 請求記号:913.361/サト>

源氏物語現代語訳書誌集成書影

明治期以降に日本で刊行された『源氏物語』現代語訳の書誌をまとめたものである。

完訳、全訳、抄訳、意訳、翻案、その他に分けて紹介。与謝野晶子や角田光代など、訳者の数は延べ60人以上。各作品の書名、出版年、ページ数、解説とともに、本のサイズ、一ページ行数、一行字数が掲載されている。文字の大きさを推測することができる(本のサイズが大きくて、一ページ行数・一行字数が少なければ文字が大きいといえる)のが老眼世代には嬉しいところ。「第一部完訳編」では、各作品の「桐壺」巻冒頭部が引用されている。同じ部分をどのように訳しているか、訳者の個性を読み比べることができるのも楽しい。

京ことばで訳されたものがあったり、わかりやすさを重視して敬語・謙譲語を抑えたりしたものがあって、手に取ってみたくなる。

掲載作品の多くは図書館で読むことができる。新年最初の読書に古典文学を考えている方、作品選びのおともに本書はいかがだろうか。

(紹介者:関 信子)

■No.2■

『ケストナーの戦争日記 1941-1945(エーリヒ・ケストナー/著 酒寄進一/訳 岩波書店 2024)

<所蔵館:久喜図書館 請求記号:945.7/ケス701>

ケストナーの戦争日記書影

エーリヒ・ケストナーは、『飛ぶ教室』や『エーミールと探偵たち』といった数々の名作を世に生み出したドイツの作家だ。1945年のことを記した終戦日記は随分 前に刊行されていたが、それ以前の日記と小説のアイディアがメモされている青い束見本(つかみほん)(刊行前に作る製本の見本)が近年パートナーの遺品から発見されたそうで、その日記部分を訳したものが本書にあたる。

この一面青色のシンプルな装丁は、発見された束見本を再現しているのだろう。

「決めたぞ。戦時下の日常で起きた重要なことを、きょうからひとつひとつ書き残すことにする。そういうことを忘れないために書くのだ。この戦争がどのような結末を迎えるにせよ、意図して、また意図せずに忘却され、改変され、解釈され、また再解釈されてしまう前に。」

プロパガンダに囲まれる中で、報道内容から周囲の噂話に至るまで、常に自分で分析し続けたケストナーの姿勢を見てほしい。注釈、編者解説も充実。

(紹介者:M・S)

■No.3■

『怪談・奇談』(小泉八雲/著 平川祐弘/編 講談社 1990)

<所蔵館:久喜図書館 請求記号:B933/ハ>

怪談奇談書影

「耳なし芳一」「雪女」。誰もが一度は読んだことがあるだろう。そんな怪談を42編収録したラフカディオ・ハーンの短編集。

朝ドラ「ばけばけ」の冒頭でも描かれたように、実はこの本の影の功労者は妻セツだった。意外にも八雲は片言の日本語しか話せず、夫から古い伝説や怪談を聴きたいとねだられたセツは、江戸時代の説話集などを買い集めて読み聞かせる。ところが彼は「本を見る、いけません。ただあなたの話、あなたの言葉、あなたの考でなければ、いけません」と、彼女自身の言葉で語り直すよう強くねだったという。音や言葉の響きを大切にしたという八雲は、日本の「語り物文化」に通じる心を持っていたのかもしれない。平易な英文で書かれた「怪談」は英米で刊行され、八雲の他の著作とともに海外における日本文化理解に大いに貢献した。

本書は新訳を担当した研究者たちにより、原著と思われる説話の翻刻原文も30編収録。どう再話したのか、比較してみると面白い。

(紹介者:K・M)

それでは、次回もお楽しみに。

2025年11月20日

令和7年度文化講座「江戸時代の本と本屋さん」を開催しました!

こんにちは。熊谷図書館の人文・社会科学資料担当です。

2025923日(火曜日・祝日)に、熊谷図書館で文化講座「江戸時代の本と本屋さん」を開催しました。

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今回の文化講座では、筑波大学 図書館メディア系 特任助教の松永瑠成(まつなが りゅうせい)先生をお招きし、江戸時代の本屋とその仕事、そして当時の本についてお話いただきました。

松永先生は、近世・近代日本における出版文化、および貸本文化に関する研究を専門とされています。
令和元年には、「日本近世文学会賞」を受賞されました。この賞は、日本近世文学会発行の機関紙『近世文藝』に掲載された論文の中から、40才以下の若手研究者を対象に、日本近世文学研究において、優れた成果をあげた論文の著者に授与されるものです。

また講座のタイトルからお分かりいただけるかと思いますが、テーマは現在放送中のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(日本放送協会、20251-)で話題となっている「江戸時代の本と本屋」について。

そんなこともあってか申込は大盛況!
倍率が2倍を超える激戦の講座となりました。

たくさんのお申込み、本当にありがとうございました。

それではここから、講座の内容や様子について少しご紹介させていただきます。

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講座は大きく3つのブロックに分かれていました。

まずひとつめは「江戸時代の本」と題して、印刷方法の違いや本の大きさについて、また本が完成するまでの流れなどについて、先生が個人で所有されているという江戸時代の和本や版木(※)をお見せいただきながらお話いただきました。

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※版木とは、本を印刷するために用いられた文字や絵が彫られた板木のことです。下の写真のように文字や絵は反転して彫られています。

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お持ちいただいた和本の中には、あの"蔦重"こと蔦谷重三郎が刊行したものもあり、会場からはどよめきの声が......!

また当時の黄表紙本と複製された黄表紙本の両方をお持ちいただいたため、その紙質などの違いを比べることができる貴重なお時間もありました。

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そして驚いたのが、先生やこの分野を研究されている方々は、実際に本に触らなくても(なんなら本の写真だけでも)、その本がどの時代のものでどんな紙が使われているか......といったことの見当をつけられるということです。"専門家の方はすごいなぁ"と感動しました。

ここで休憩をはさんだのですが、休憩が始まると同時に参加者の皆さんは先生がお持ちになった資料のところへ大集合!
それぞれお手に取りながら、先生にいろんな質問をされており、大変にぎやかで有意義な休憩時間となっていました。

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つづいて「江戸時代の本屋さん」と題して、本屋が誕生する前の印刷のお話から本屋の誕生、そして江戸時代の本屋の仕事のお話まで、本屋に関することを多岐にわたってお話しいただきました。

本屋の仕事については、仕事のシーンごとに当時、記録として出版された絵や帳簿を見たり、放送された大河ドラマの描写を絡めたりしながらお話してくださったため、イメージしやすく参加者の皆様からも納得の声が聞こえてきていました。

またここで登場したのが「須原屋茂兵衛」という版元。埼玉は浦和にあります書店「須原屋」はこの「須原屋茂兵衛」の流れをくむ書店なのです。
身近なお店が出てくるとやはり嬉しいですよね。

最後は「熊谷の本屋さん」と題して、図書館のある熊谷の本屋について、実際に営業されていたことがわかる資料を投影しながら紹介していただきました。
書店が販売していた絵葉書も紹介され、そこには熊谷の夕焼けが描写されており、時代を越えたつながりを感じました。

以上で講義は終了。

質疑応答の時間へと移ったところ、参加者の中から「紹介していただいた書店を、今営業している者です。」という方が!
これには皆さん驚かれている様子でした。

その他にも、教育と本屋の関係や古書販売についての質問もありました。

ここでお時間が来てしまい、惜しまれつつも講座は終了となりました。

参加者の皆さんからは「先生のお話がわかりやすく大変興味深く聞けた」「大河ドラマを見るのがもっと楽しみになった」「和本や版木の実物を手に取る事ができてよかった」など大好評な様子がうかがえる感想をいただきました。

改めて、ご参加いただいた皆さま、素敵な講義に加え、貴重な和本や版木をお持ちいただいた講師の松永瑠成先生、ありがとうございました。

関連資料展(※2025928日に終了しました)の資料リストやパスファインダーは下記URLからご覧いただけます。

【熊谷】資料展「江戸の出版文化」 - 埼玉県立図書館

自宅で簡単! デジタル画像で和本をみる

また県立図書館でも和本を所蔵しております、
気になる方は、遠慮なく職員にお申し付けください。

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文化講座は毎年テーマを変えて開催しています。

今回残念ながらご参加いただけなかった皆さまも、今回ご参加いただいた皆さまも、ぜひ来年度お越しください!

ご参加お待ちしております。

2025年11月12日

資料展『知る・味わう・酔いしれる―知識が彩る酒の世界』の展示解説を行いました。

こんにちは。
久喜図書館の自然科学・技術資料担当です。

久喜図書館では、令和7729日(火曜日)から令和7925日(木曜日)まで、資料展『知る・味わう・酔いしれる―知識が彩る酒の世界』を開催し、展示期間中に、資料展関連ミニ講座「聞いて酔いよい 見て酔いよい~目と耳で酔い知る展示解説~」を3回実施しました。

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▲当日のポスター

今回のブログでは、3回の資料展関連ミニ講座での様子をそれぞれご紹介します。

資料展『知る・味わう・酔いしれる―知識が彩る酒の世界』の様子

まずは、開催していた展示について、簡単にご紹介します。

資料展では、お酒にまつわるさまざまな知識や文化をテーマに、歴史から楽しみ方、そしてお酒がもつ作用まで、幅広い視点でその魅力をお届けするべく、お酒に関する158冊の資料を展示いたしました。

資料展「知る・味わう・酔いしれる」写真1.jpeg

展示期間中は沢山の方にご来館いただき、資料を手に取って読んでいただくことができました。
ご来館くださったみなさま、ありがとうございました。

展示した資料のリスト等は、当館ウェブサイトで公開しています。
詳細については、以下のページをご覧ください。

資料展関連ミニ講座「聞いて酔いよい 見て酔いよい~目と耳で酔い知る展示解説~」

上記展示の期間中には、資料展関連ミニ講座「聞いて酔いよい 見て酔いよい~目と耳で酔い知る展示解説~」を3回実施しました。

このミニ講座では、当館司書が毎回テーマを変えて、展示資料をブックトーク形式でご紹介しました。
ブックトークとは、特定のテーマに基づいて複数の本を選び、順序立てて紹介するものです。

また、各講座では、毎回形の違う資料リストを配布し、参加者の方にお楽しみいただきました。

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▲各回の資料リスト

1回:令和7820(水曜日)
2回:令和7911(木曜日)
第3回:令和7918(木曜日)
いずれも午後2時~2時30分に開催

それでは、各回の様子と紹介した資料をご紹介します。

1回「宴会」

ミニ講座の1回目は、「宴会」をテーマに、6冊の資料を紹介しました。

1『酒宴のかたち』(玉村豊男[ほか]TaKaRa酒生活文化研究所 1997)

1冊目は、宴会にまつわるエッセイや研究記事をまとめた本です。例えば、江戸時代に歌舞伎役者が行っていたという宴席でのもてなしや、お花見と宴の文化、船の上での宴会など、宴会をテーマにした様々な記事がまとめられています。今回のミニ講座ではその中の「酒宴の始まりについて」という記事を一部読み上げ、平安、鎌倉、室町と時代が経つにつれて、酒宴にまつわるしきたりが制度化され、公家から武家へと伝えられたことを紹介しました。

2『『酒飯論絵巻』影印と研究 文化庁本・フランス国立図書館本とその周辺』(伊藤信博[ほか]編 臨川書店 2015)

2冊目は室町時代に制作されたとされる絵巻物を紹介しました。「酒飯論絵巻」とは、酒好き(上戸)と、お酒が飲めない飯好き(下戸)、酒と飯の両方好きな者(中戸)がそれぞれ優劣を主張しあう話です。眠っている人、歩行困難になっている人、吐いている人と、現代と変わらない酔っ払いの姿を会場の皆様に見ていただきました。

3『妻の超然』(絲山秋子著 新潮社 2010)

小説『妻の超然』に収録されている一篇「下戸の超然」では、宴会の時はお酒は飲まず、参加者を車で送る役回りな下戸の男性が主人公です。ある日ふとしたきっかけで同僚の女性と恋仲になりますが、この女性がよくお酒を飲む人で、主人公にしつこく酒を勧めるために二人の間に徐々に亀裂が生じてきます。二人の恋の行く末はぜひご自身でお確かめください。

4『餐巾 宴席ナプキン122種「折り方と演出」』(日本中国料理調理士会編 悠々社 1989)

4冊目には中国料理における宴席ナプキンの折り方をまとめた本を紹介しました。写真とともに122種も折り方を掲載しているので、この中の一つ、二つマスターしておくと、普段は宴会が気詰まりだという方でも、むしろ周囲を楽しませる側になれるかもしれません。

5『新しい日本料理 5 酒の肴の料理とお通し』(志の島忠編著 旭屋出版 1995)

お店ではなく家で宴会を催す方向けの本も紹介しました。5冊目は、日本料理のシリーズ本の1つで、400ページまるまる1冊通して酒の肴について紹介しています。調理法だけではなくて料理の盛り付け方、器の選び方などにも力を入れていて非常に内容が充実しているため、肴全般について詳しくなりたい方にオススメです。

6『THE REAL Japanese Izakaya COOKBOOK 120 classic bar bites from Japan(WATARU YOKOTA Makiko Itoh訳 チャールズ・イー・タトル出版 2019)

6冊目は英文表記の料理本です。切り方、魚のおろしかたから始まり、120の居酒屋メニューの調理法を紹介しています。外国語資料は普段は熊谷図書館にありますが、展示期間中はこの本を久喜図書館で手に取ることができました。5冊目に紹介した『新しい日本料理5』よりも軽いものを読みたい方にオススメです。

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▲ブックトークで紹介した資料は、テーブルに展示し、参加者の方に手に取って見ていただきました。

2回「日本のお酒、世界のお酒」

2回目は、「日本のお酒、世界のお酒」をテーマに、6冊の資料を紹介しました。

1『大吟醸 河野裕昭写真集』(河野裕昭著 ぴあ書籍研究会 1995)

1冊目は、日本酒「大吟醸」を造る過程を撮った写真集です。「長期間にわたり大吟醸酒の造られる過程を撮り続けた著者だからこそ分かる酒造りの苦労、繊細さ、美しさが白黒の写真一枚一枚から伝わってくる」と紹介しました。目次に大吟醸酒を造る工程と、各工程に対応する写真の載ったページ数が書かれていることから、大吟醸酒を造る流れが分かりやすく、日本酒に詳しくない方にも入門書としておすすめの1冊です。

2『ラム酒の歴史』(リチャード・フォス著 内田智穂子訳 原書房 2018)

日本酒に続いて、2冊目には、世界のお酒「ラム酒」の歴史について書かれた本を紹介しました。ラム酒は、サトウキビの糖蜜または絞り汁を原料として作られる蒸留酒で、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』や小説『宝島』『ロビンソン・クルーソー』などにも登場します。この本は、「誰かに話したくなるようなトリビアな話が満載であり、図版や写真が豊富で、楽しく読み進めることができる」と紹介しました。

3『リキュールの世界』(福西英三著 河出書房新社 2000)

3冊目は世界のお酒「リキュール」についての本です。リキュールは、醸造酒や蒸留酒をベースに、糖類、香料、果実、ハーブなどを加えて作られるお酒、「混成酒」に分類されます。なんと現在のリキュールの原型は、錬金術師たちによってつくられた、薬酒や錬金術の薬液なのだそう。この本では、リキュールと錬金術の関わり、関連エピソード、リキュール誕生の歴史的背景など興味深い話題がたくさん紹介されています。日本人の著者によって書かれているため、日本におけるリキュールの楽しみ方などについても書かれています。

4『アブサンの文化史 禁断の酒の二百年』(バーナビー・コンラッド三世著 浜本隆三訳 白水社 2017)

4冊目は、幻の禁じられたお酒「アブサン」に関する本です。アブサンはニガヨモギを原料とした薬草系リキュールの一つで、薄緑色をしています。19世紀にはヨーロッパなどで、多くの芸術家たちに愛飲されましたが、幻覚作用があると懸念され、20世紀初頭から約1世紀にわたって各国で製造が禁止されました。この本では、アブサンの歴史や、逸話、社会的影響などがたくさんの図版とともに分かりやすく解説されています。マネ、ドガ、ロートレック、ゴッホ、ゴーギャン、ピカソなどの有名な芸術家のアブサンにまつわるエピソードが次々に繰り広げられ、19世紀末ヨーロッパに漂う退廃的な雰囲気が伝わってくる読み応えのある1冊です。

5『黄土に生まれた酒 中国酒、その技術と歴史』(花井四郎著 東方書店 1992)

5冊目は中国のお酒についての本です。中国では、古来から数々の銘酒がつくられてきました。この本では、中国酒を黄酒(ホワンチュウ)(醸造酒)、白酒(バイジュウ)(蒸留酒)、葡萄酒の三つに分け、それぞれの銘酒の起源・製法などを解説しています。中国の古典書をはじめとして、数多くの文献が引用されており、中国酒の製造方法についての詳細はもちろんのこと、中国酒の文化的、歴史的背景についても、詳細に記されています。

6『世界手づくり酒宝典 図解文集』(貝原浩著 農山漁村文化協会 1998)

最後に紹介された本は、手づくり酒についての本です。この本では、日本、そして世界各国の手づくりのお酒と、お酒をつくる現地の人びとの様子が、次々と紹介されます。韓国済州島の粟酒や、インドネシアのヤシのお酒など、普段あまり耳にすることのないお酒についても、イラストとともに楽しく知ることができます。お酒ができる仕組みを知るのに良い1冊です。

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▲第2回では、ホワイトボードで、お酒の種類、麹という漢字、精米歩合などについて解説しました。

3回「酒器と装い」

3回目は、「酒器と装い」をテーマに、5冊の資料を紹介しました。

1『缶とラベルのデザイン』(斎藤日出男企画編集 美術出版社 1991)

1冊目には、菓子、紅茶、ジュース、ビール、食料品などの缶とラベルデザインがオールカラーで350点あまり掲載されている本が紹介されました。スペイン、ドイツ、アメリカなど様々な国のビール缶の写真が掲載されているページもあります。缶を眺めているだけで、旅行気分が味わえそうですね。グラフィックデザイナーの著者は、「はじめに」で缶のパッケージデザインについて「缶は、なにしろ缶切りで開けて見ないことには中身が分からない。(中略)だから、パッケージデザインとしては、ラベルに中身の品を写真やイラストレーションによって説明せざるをえないのである。そのような点で、タイポグラファーとイラストレーターの力量がもっとも問われる仕事なのだ。」と紹介しています。タイポグラファーやイラストレーターたちの力作をどうぞご覧ください!

2『スコッチ・ウィスキー物語 ラベルに読む英国の歴史』(森護著 大修館書店 1990)

ラベルはデザインを楽しむだけではありません。ラベルに描かれている紋章から、国の歴史を読み解くこともできるのです。2冊目に紹介されたのは、紋章学の研究者で大阪港の紋章の生みの親でもある著者が、紋章学の解説から始まり、ラベルに登場する国王や女王、貴族、ナイト、聖職者のエピソードを綴った1冊です。「終章 スコッチ・ウィスキーを楽しむ」では、「中身ではないスコッチを楽しむ方法」としてミニチュア・ボトルのコレクション、パブめぐり、スコッチ・ウィスキーヘリテージセンター(イギリスにあるスコッチ・ウィスキーに関する展示施設)への訪問が提案されています。スコッチ・ウィスキーの本場に行ってみてはいかがでしょうか。

3『琥珀色の奇跡 ウイスキーラベルの文化史』(河合忠著 現代創造社 2007)

スコッチ・ウィスキーの歴史の次は、ウイスキーラベルに魅せられた著者が世界中を巡って調査した本が紹介されました。この本には、アイリッシュウイスキー、スコッチウイスキー、アメリカンウイスキー、カナディアンウイスキー、ジャパニーズウイスキーに関する130を超えるテーマが収録されています。特にジャパニーズウイスキーについて詳しく触れられていて、サントリーとニッカウヰスキーの創業者が運命の出会いを果たす「本格モルトウイスキーを生んだ鳥井信治郎と竹鶴政孝」の章や国産第一号ウイスキー「サントリー白札」誕生についての記述もあります。また埼玉県秩父市でイチローズ・モルトを製造している株式会社ベンチャーウイスキーも紹介されています。「世界はウイスキーで広く結ばれている」ことが実感できる1冊です。

4『盃物語』(篠田恒男著 光芸出版 2006)

ラベルの世界を堪能したあとは、器の世界へといざないます。鬼面盃(きめんはい)のデザインのおもしろさに惹かれ、これが契機となってその後30年間にわたり盃を収集してきた著者が、近世~近現代の史料的な価値の高い盃を自ら選んで掲載した本です。「諧謔・滑稽・風刺的な出来で、庶民にとって大いに笑いながら楽しめる実用品であった」鬼面盃の次は美人盃を見てもらいました。著者は「あとがき」で「今日も盃は私に語り掛けてくる。私は盃の中に埋まっている。その盃に酒を注いだことはない。私は酒が飲めないのである。」と書いています。埼玉では「風が語りかけます・・・」の某まんじゅうが有名ですが、盃も語りかけてくるんですね!

5『伊丹国際クラフト展 2024 酒器・酒盃台』(市立伊丹ミュージアム編 市立伊丹ミュージアム c2024)

最後に紹介されたのは、「清酒発祥の地」といわれる兵庫県伊丹市にある市立伊丹ミュージアムで2024年に開催された「伊丹国際クラフト展 酒器・酒盃台(しゅはいだい)」の入賞・入選作品を掲載した本です。「日本酒で乾杯するシーンを愉しむ酒器」、「楽しい酒の場を演出するための酒盃台」、「日本酒を愉しむ新しい発想の酒器・酒盃台」について募集したところ、海外11か国75件を含む計261件、総数1184点の応募がありました。大賞を受賞した「ハナコ酒器セット」は、人目を惹く作品です。この作品の作者の言葉が印象的なので、ぜひ読んでみてください。他にも、「ヨーイ、ヨイ よーい、酔い」というこの講座のタイトルと同じような発想で名づけられた作品もあり、親近感がわきます。ユニークな作品の数々をお楽しみください。

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▲第3回で紹介した資料と担当職員

資料展で展示した資料、ミニ講座で紹介した資料はいずれも貸出が可能です。
気になる資料があった方はぜひ、読んでみてください!