メニューにジャンプこのページの本文へジャンプ
埼玉県立図書館 あなたの調べるを応援します

« こんな本あります!―久喜図書館の書棚から― | 図書館ブログ | 「第7回ウェスタ川越 県民ふれあいフェスタ」に参加しました! »

2024年11月15日
100年前の長瀞観光案内~名勝及び天然記念物「長瀞」指定100周年~

「長瀞」は名勝及び天然記念物に指定されてから100周年を迎えます。

名勝及び天然記念物「長瀞」とは荒川沿いの旧親鼻橋付近から旧高砂橋付近に至る約4kmの区間をいい、「結晶片岩より成る峡谷、両岸の絶壁、岩畳は景勝、学術的には紅簾片岩を始めとする結晶片岩の露出多く、褶曲、断層等地質学的価値が高い」(『ながとろ風土記』p199 長瀞町教育委員会 1974)とされています。
1924(大正13)年12月9日に国の名勝及び天然記念物に指定されました。

そこで、今回は約100年前に発行された長瀞に関する所蔵資料を紹介します。
いずれも観光客向けに発行された案内で、眺めるだけで惹きつけられます。

『秩父鉄道沿線名所図会』(秩父鉄道株式会社 秩父鉄道 1922)
白黒写真や彩色の絵図、名所案内がまとまった資料です。
案内の文章が美しく、旅情を掻き立てられます。
「秩父鉄道が吉田初三郎に依頼した観光ガイド用の鳥瞰図で、長瀞の観光開発や武甲山の石灰石採掘など沿線開発の様子が分かります。」
(『ひと・もの・はこぶ 秩父から/秩父へ』p20 埼玉県立川の博物館 2023)

秩父鉄道沿線.jpg

『長瀞鳥瞰図 ながとろ清遊案内』(青木清一 1925)
都会から長瀞に訪れる人への案内書です。奥書に「今回天然記念物として永久に保在させらるるに及んで一層推賛の價ある勝地となった」とあり、指定を契機に作製したことがわかります(『自然の博物館100年の軌跡』p39 埼玉県立自然の博物館 2020)
表面には近辺の旅館や料理屋などの情報、裏面には長瀞の商工業者の広告があります。

なお、こちらの資料は埼玉県立図書館デジタルライブラリーで公開されており、インターネット上で閲覧ができます。

長瀞鳥瞰図.jpg

『秩父ながとろ遊園地図会』(秩父鉄道株式会社 秩父鉄道 [192-])
表に彩色の絵図、裏に「秩父風光遊覧手引」として観光案内が載っています。
「長瀞遊園地」は、「比較的廉価に宿泊できる旅館(養浩亭)、テニスコート、野球場や200mの直線競争場を備えた運動場などからなり、現在の運動公園の体をなしていました。」(『自然の博物館100年の軌跡』p28 埼玉県立自然の博物館 2020)

秩父ながとろ遊園地図会.jpg

『秩父長瀞地方地質遊覧案内』(神保小虎著 秩父鉄道 〔192-〕)
東京帝国大学教授理学博士による地質見学の案内です。
上武鉄道(現秩父鉄道)が金崎まで開通した明治44年9月以降、著者の神保氏は学生を連れて頻繁に秩父地域を訪れるようになったといいます。(『自然の博物館100年の軌跡』p18 埼玉県立自然の博物館 2020)
写真のほか、地質図や地形図が掲載されています。

秩父長瀞地方地質遊覧案内.jpg

現在も「長瀞」は有名ですが、100年ほど前の資料を見ても、当時から観光の目玉として注目されていたことがわかります。

『秩父鉄道五十年史』(p41 秩父鉄道 1950)や『秩父鉄道の100年』(p52 郷土出版社 1999)によると、秩父鉄道は長瀞が景勝地として知られる前から、旅客誘致のために宿などの施設を造ったといいます。そして大正13年に長瀞が名勝及び天然記念物に指定されると、多くの観光客が長瀞駅を利用するようになりました(『秩父鉄道の100年』p41 郷土出版社 1999)。その一環でたくさんの観光案内が発行されたのでしょう。


さて、秩父地域では10月下旬から11月下旬にかけては紅葉が見ごろだそうです。紹介資料1点目の『秩父鉄道沿線名所図会』では「秋深ふなれば懸崖に這ふ蔦紅葉霜に飽きて延々燃ゆるが如く美観名状すべらず」と、その見事さを称えています。秋の行楽に長瀞に足を運んでみるのも素敵ですね。

当館では、上記のような古い資料のほかにも、長瀞に関するさまざまな資料を所蔵しています。図書館のある熊谷と長瀞は秩父鉄道で行き来できますので、調べものや長瀞観光のついでに足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

数.jpg

余談ですが、埼玉県立自然の博物館で「名勝・天然記念物「長瀞」指定100周年記念」をテーマに、企画展「長瀞自然遊覧」(令和6年10月26日(土)から令和7年2月24日(月))開催しています。長瀞のことを知りたい方にはうってつけですね!