2022年3月
2022年3月31日
ひまわりの咲く国より
視聴覚資料・図書館振興担当です。
毎日届けられる戦禍の知らせに心を痛めている方も大勢いらっしゃるかと思います。
図書館でも当事国について問い合わせを受けることが目に見えて増えており、
皆さまの関心の高さが伺えます。
こうした状況を受けてでしょうか。最近多くのリクエストが寄せられる映画作品があります。
イタリアの巨匠、ヴィットリオ・デ・シーカ監督による映画「ひまわり」(熊谷図書館所蔵VD)です。
1970年に公開された本作は、ソビエト戦線に送られた夫、アントニオとその帰りを待つ妻ジョバンナが戦争により引き裂かれる姿を描きます。声高に反戦を叫ぶことなく、淡々と進行するストーリーをヘンリー・マンシーニの重厚な音楽が彩ります。
そしてこの映画のもう一つの見どころが、地平線までひろがる一面のひまわり畑です。これはウクライナの首都キエフから南へ500kmにあるヘルソン州で撮影されたもので、今でも7月下旬頃になると辺り一面に咲きほこるひまわりを見ることができます。
映画では、行方不明となった夫、アントニオを探すためにジョバンナは戦争終結後のソ連へと旅立ちます。そこで彼女を迎えたのはどこまでも続くひまわり畑とおびただしい数の白い十字架でした。
あまりにもはてしない光景に目を奪われ、ただ呆然と立ち尽くす彼女。
その姿は時代の波に翻弄された人間のやるせなさに満ちています。
欧州における今世紀最大規模とも言われる今回の侵攻。
いつか荒廃した街が復興し、ひまわりの花が咲くころ、人々の悲しみは癒えているのでしょうか。
アントニオやジョバンナのような思いを抱く人が一人でも少なくなることを祈ります。
向日葵に天よりも地の夕焼くる
山口誓子
2022年3月31日
令和3年度文化講座「わくわくする、からだと心の対話術」をお読みいただけます(県立久喜図書館)
こんにちは。久喜図書館の芸術・文学資料担当です。
もうすぐ4月ですね。新しい年度が始まる時期です。
就職、進学などを迎える方々にとっては、大きな節目となる時期でもあると思います。
そんな4月、埼玉県の舞台芸術の分野でも、節目となる出来事が予定されています。
2022年4月から、彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督に、コンドルズ主宰・振付家・ダンサーの「近藤良平」さんが就任されます。
「彩の国さいたま芸術劇場 近藤良平芸術監督 就任インタビュー」
(https://www.saf.or.jp/arthall/information/detail/93138/ 彩の国さいたま芸術劇場)
近藤さんには、令和3年10月9日に当館主催の文化講座でご講演いただきました。タイトルは「わくわくする、からだと心の対話術」でした。当日は、多くの方にご参加いただき、大変ご好評いただきました。
これから埼玉県の舞台芸術分野に大きく関わる方の考えにふれる機会として、今回、近藤さんご本人にも許可をいただき、特別に講演内容をテキスト化したものを全文公開いたします。(以下のリンクからアクセスできます。)皆様に楽しんで頂けると幸いです。
「令和3年度文化講座『わくわくする、からだと心の対話術』 全文テキスト」
尚、講演後に近藤さんもご覧になった展示「資料展「近現代の身体表現」」資料の一覧は、資料リスト「近現代の身体表現」(PDF:804KB)からご覧いただけます。
遠方にお住まいで気になる資料がある場合、協力貸出など遠方の方向けのサービスも行っています。ぜひご利用ください。
【久喜】資料展「近現代の身体表現」(展示は終了しています)
https://www.lib.pref.saitama.jp/event/exhibit/exhibit/post-126.html
「相互貸借(他の図書館との資料貸出・借受)について」
https://www.lib.pref.saitama.jp/guidance/service/sougo.html
「遠方にお住まいの方へ」
https://www.lib.pref.saitama.jp/guidance/service/enporiyo.html#yuso_service
2022年3月30日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『岩波少年文庫のあゆみ1950-2020』(若菜晃子 編著 岩波書店 2021)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:J 909/イワ>
岩波少年文庫は1950年、世界の児童文学から古典の名作と現代の傑作を選び、翻訳は原作に忠実に、美しく平易な日本語を使用するという特色を掲げて創刊された。
本書では、装丁や挿絵の変遷、新訳への変更への経緯などが記され、編集者の子どもの本への熱意が伝わってくる。70年経っても、子どもたちに一生の宝となるすぐれた文学を手渡したいという思いに変わりはないことが伺える。
(紹介者: 高野)
■No.2■
『寄り添って、寄り添われて』(堺武男 著 アーツアンドクラフツ 2011)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:493.9/ヨリ>
医師である著者が、東北地方の新生児・小児医療に携わった経験を基に書かれた1冊。
NICUや外来で診療する患者やその家族との関わりから、著者が学んだことや思いが丁寧に書かれている。新生児・小児医療のお世話になったことがある人にとって、心が救われる内容が詰まっている。コロナ禍でも、NICUで小さな命が闘いながら生きていることを思い起こすために、新生児・小児医療を知らない人にこそ、手に取ってほしい本である。
(紹介者:五十嵐)
■No.3■
『二人の紅茶王 リプトンとトワイニングと・・・』(磯淵猛 著 筑摩書房 2000)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:596.7/フタ>
2019年2月、紅茶研究の大家である磯淵猛先生が急逝された。紅茶愛にあふれる先生のお話やその笑顔は、絶対に忘れない。
この紅茶をめぐるエッセイ集では、副題にもある通り、リプトンとトワイニングについて特にページが割かれている。全く異なる境遇・手法で、世界の紅茶王になった二人―。リプトンの商才や、歴代トワイニング家とイギリスの歴史。読めば、普段飲んでいる紅茶の味わいが、少し違って感じられるかもしれない。
(紹介者:吉田)
それでは、次回もお楽しみに。
2022年3月25日
資料収集・整理業務の紹介
熊谷図書館 資料収集・整理担当です。
資料収集・整理担当は、県立図書館で受け入れる本を選んだり、本にバーコードや背表紙のラベルを貼ったり、県立図書館のウェブサイトや館内の検索端末で検索できるよう本のデータを作成したりといった業務を行っています。
なお、資料収集・整理担当は熊谷図書館にありますが、久喜図書館の本もこの担当で受入をしています。
今回は資料収集・整理担当の業務の紹介を通して、どのようにして図書館に本が受入されるのかを見ていきたいと思います。
本の選定について
本を選定では、実際に手元に本があってそれを選定する場合と、手元にない本の情報を集めて選定する場合の2種類があります。
本を手に取って確認する選定では、週に100~200冊の新刊本の現物を見てその中から受け入れる本を選びます。
▼ 棚に並べた本の中から、週に1度どの本を受け入れるかを担当内で話し合います。
本の現物が手元にない場合は、新刊本の情報を掲載している雑誌や、出版社から送られてくるパンフレット・チラシ、出版社や書店のウェブサイトなどから本の情報を確認し、何を受け入れるか選びます。
▼ 新刊本の情報が掲載されている「週刊新刊情報」
本を選ぶ際には、本の主題や著者、出版社といった基本的な情報に始まり、類書の有無、参考文献や索引がついているか、想定される読者対象、出版された経緯、本の装丁が保存に適しているものか、など様々な事項を踏まえて検討しています。
埼玉県立図書館がどのような本を収集するかは、埼玉県立図書館資料収集方針に定められています。
県立図書館として求められる専門的・学術的な本や、調べ物に役立つ本などを中心に収集しています。
また、埼玉県立図書館には官公庁や団体、企業、個人の方などが発行した本が寄贈されるため、それらの資料についても受入を行っています。中には書店では売られていない希少な本や非売品の本などもあります。
本の装備について
選んだ本が図書館に用意できても、そのままでは新刊コーナーに並べることはできません。
本に図書館の所蔵資料であることを示すための印を押したり、貸出・返却の時に読み込むバーコードや背表紙のラベルを貼ります。さらに利用の多い本は透明のフィルムでコーティングします。そのような作業を「装備」と呼びます。
装備について詳しく知りたい方は当ブログの2011年12月1日記事「図書館資料の「装備」について」をご覧ください。
装備を行うことで、みなさんが図書館で見る本のかたちになります。
本のデータ作成について
最後に、コンピュータで本の情報を管理したり、図書館内の検索端末やウェブサイトで検索できるようにしたりするためのデータの作成を行います。
このデータにはタイトルや著者名、出版年月といった本の基本的な情報だけでなく、本のテーマに沿ったキーワード(件名)や、図書館のどこにあるか分かるようにする情報などが含まれています。
また、埼玉県立図書館独自の作業として、本の内容の一部に埼玉県に関する記述があった場合はデータに加えています。
▼ 以下は埼玉県立図書館のウェブサイト蔵書検索の資料詳細画面です。タイトルや内容紹介には書かれていませんが、渋沢栄一や尾高惇忠についての記述があることが追記されています。
▼ 以下は同じ本の国立国会図書館(NDL ONLINE)のデータですが、こちらには渋沢栄一や尾高惇忠といった人名は書かれていません。
他にも、「秩父の地名伝説の虚実(うそほんと)」という本があります。この本のタイトルの「虚実」は「うそほんと」と読みますが、漢字の読み方どおりに読んで探す人がいるかもしれません。そのため2通りの読み方をデータに加えています。
▼ タイトルを「ちちぶのちめいでんせつのうそほんと」で検索した場合
▼ タイトルを「ちちぶのちめいでんせつのきょじつ」で検索した場合
このように図書館の本をより探しやすく、より使いやすくなるように工夫してデータを作成します。その後、熊谷・久喜の県立図書館にそれぞれ本を送ります。
その本が新刊コーナーに並べられ、図書館の本としてみなさんにご利用いただいています。
いかがでしたでしょうか?
みなさんが多くの本と出合えますように、これからも担当一同業務に尽力してまいります。
2022年3月25日
記録集が完成しました!「図書館と県民のつどい埼玉2021」
「図書館と県民のつどい埼玉2021」の記録集が完成しました。
・司書が語るLiveイベント
・中学生のビブリオバトル
・鈴木まもるさん講演会
・伊吹有喜さん記念講演
・司書が魅せる!WEB展示
それぞれのイベントの様子をA4,24ページで、ご紹介しています。
鈴木まもるさんの講演会のページでは、絵本のことや、鳥の巣研究家になった理由など、
伊吹有喜さんの記念講演のページでは、アマチュア時代に図書館をとても利用されていたことや、作家になる前に少女雑誌のイベント運営を担当されていたことなど、お話しいただいた内容をまとめ掲載しています。
その他のイベントも「どのようなことを行ったのか」「工夫したところ」「苦労したところ」など詳しく掲載しています。
以下サイトで全ページダウンロードできますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
https://www.sailib.net/tudoi(埼玉県図書館協会ウェブサイト)
こちらのページでは、今年度の開催分だけでなく、2007年第1回目から2021年第15回目まで、全ての回の記録集を掲載しています!
ぜひ、ご覧いただけたら幸いです。