資料紹介
2024年3月25日
デジタル行政資料のご紹介
こんにちは。熊谷図書館の資料収集・整理担当です。
今回は県立図書館が収集に取り組んでいる「デジタル行政資料」についてご紹介します。
「デジタル行政資料」って?
県立図書館では県や市町村がウェブサイト上で公開している刊行物のデジタルデータのことを「デジタル行政資料」と呼んでいます。
世の中のペーパレス化が進む中で、今まで紙媒体で発行されていた行政刊行物がデジタルデータでウェブサイト上に公開されるケースが増えています。
県立図書館ではこうしたデジタルデータを収集し、「埼玉県立図書館デジタルライブラリー」で公開しています。
上の画像のように、デジタルライブラリーの詳細検索画面で行政資料区分の「行政資料」を選択すると、検索結果をデジタル行政資料だけに絞り込むことができます。
デジタル行政資料を収集する目的
先程の説明を見て、「ウェブサイト上に公開されているなら直接データにアクセスすればいいのでは?」と思われたかもしれません。
確かに、最新のデータが見たい場合にはそうした調べ方も可能です。
しかし、ウェブサイトの情報は頻繁に更新され、過去の情報はやがて削除されてしまいます。
こうして失われてしまう可能性があるデジタル行政資料を、将来に渡って利用できるようにするために、県立図書館は資料の収集と保存に取り組んでいます。
また、県と県内市町村全域の行政資料を収集していますので、複数のウェブサイトを行き来しなくても、デジタルライブラリーだけで関連資料を比較することができます。
例えば、上の画像のようにデジタルライブラリーを「地域防災計画」で検索すると、県のほか市町村のデジタル行政資料も複数ヒットします。
市町村のデジタル行政資料の公開は始まったばかりですが、これから随時更新をしていく予定ですので、ぜひご活用ください!
デジタル行政資料のご紹介
「埼玉県立図書館デジタルライブラリー」では現在1139点のデジタル行政資料を公開しています(3月15日時点)。
今回はその中から以下の3点の資料をご紹介します。
それぞれリンク先の資料詳細画面でPDFをダウンロードすることでご覧いただけます。
1 『埼玉県立図書館創立百周年記念誌』(埼玉県立図書館創立百周年記念誌編纂委員会編 埼玉県立熊谷図書館 2022.12)
令和4年に県立図書館が開設100周年を迎えたことを記念した刊行した記念誌です。
昭和45年の複数館体制移行前後から現在に至るまでの約50年間についてまとめられています。
2 『新型コロナウイルス感染症対策 令和5年12月 埼玉県の取組』(埼玉県〔編〕 埼玉県 2023.5)
保険医療政策課が作成した、県の令和5年9月30日までに実施した新型コロナウイルス感染症対策に関する報告書です。
県が公表してきた新規陽性者数などのデータと共に、未知の新興感染症に対して県が実施した様々な対策がおよそ800ページにも渡ってまとめられている、後世に向けた貴重な記録資料です。
3 『渋沢栄一をめぐる旅 深谷駅北エリア 渋沢栄一ゆかりのスポット周遊ガイド,渋沢栄一の故郷・深谷でゆかりの地をたどる。』(〔深谷市観光協会〕 深谷市観光協会 〔2023.3〕)
深谷市作成のJR深谷駅北の渋沢栄一関連施設を紹介したガイドマップです。
こちらは紙媒体では貸出不可の資料ですが、デジタル行政資料はインターネットに繋がる環境があればいつでも、どこでも利用することができるため、「資料を見ながら現地を観光する」といったこともできるようになりました。
なお、先にも少し触れましたが、今回ご紹介した資料の1と3については、デジタル行政資料に加えて紙媒体も所蔵しています。
このように、たとえ内容が同じであっても、貴重な地域資料を保存する役割を担う県立図書館として、今後とも紙とデジタル両方の資料の収集を続けていきます。
利用上の注意事項(二次利用について)
最後に、デジタル行政資料を調査・研究等で利用したいと考えている方へのご案内です。
「埼玉県立図書館デジタルライブラリー」で公開しているデジタル行政資料は、CCライセンス及び当館の利用規約に則って二次利用が可能です。
二次利用条件は資料詳細画面の赤枠の位置に表示されています。
デジタル行政資料を論文に掲載したり、プレゼンテーション等で利用される場合は、事前に二次利用条件のご確認をお願いします。
2024年3月23日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『源氏供養 上巻・下巻』
(橋本治著 中央公論社(中公文庫)1996)
<所蔵館:久喜図書館 B913.36/ゲ>
高校の授業で「源氏物語」に触れて以来、貴公子の女性遍歴には興味がない、と敬遠してきた。しかしあらゆる日本文化に引用されるこの物語。ストーリーを知る必要に迫られ、谷崎でも与謝野晶子でもなく橋本治が訳した「窯変源氏物語」を手に取ってみた。当時の世相や身分制度の丁寧な解説あり、現代にも通じる心理描写あり。「源氏」の面白さに目覚める体験となった。
この「源氏供養」は「古典は自分達とはあまり関係ない高級で難解な文化遺産」と思っている日本人に向けて「源氏物語が面白いのはそこに自分がいるから」と伝えたい橋本が書いた解説本である。女がじっと家の中に閉じ込められ男の訪れを待つしかなかった時代、紫式部は「女も人だ」と言いたかった。中流貴族の娘である紫式部の立場と思いとは。平安時代とは。千年を経ても変わらぬ男女の心とは。大河ドラマ「光る君へ」をより深く楽しみたい人にもお薦め。
(紹介者:M.K)
■No.2■
『奇跡を呼んだ猫たちのおとぎ話』
(ジョン・リチャード・スティーブンス編 池田雅之訳 草思社 1999)
<所蔵館:久喜図書館 908.38/ステ>
神秘的で不思議な生き物に描かれた猫。本書では、そんなおとぎ話の猫に心惹かれた作者が世界中から集めた猫の物語を紹介している。例えば「長靴をはいた猫」の長靴をはいていない頃のお話、アイルランドの伝説が起源と見られる、全ての猫を支配していた「猫の王様」が登場する幾つかのお話など。
賢く不思議な猫ばかりだが、初めて読むお話の中でも、どこか出会ったことのある様なキャラクターを持つ懐かしい猫と再会する。時代を超えて愛される猫の魅力を知ることができる。
(紹介者:N.M)
■No.3■
『台湾における「日本」の過去と現在 糖業移民村を視座として』
(野口英佑著 ゆまに書房 2023)
<所蔵館:久喜図書館 521.8/タイ>
台湾といえば何か。タピオカ、九份、親日...漠然としたものしか浮かばない人に対して、日本人が向き合うべきものは何かを詳述したのが本書である。日本統治時代に台湾で建てられた神社が再建された例から、台湾の中で「日本」がどう捉えられてきたかを追う。
台湾を一括りに見ず、地域や民族を丁寧に捉えている点がこの本の魅力である。政治的事情からも関心が高まる台湾を正確に知りたいと思う人にぜひ贈りたい1冊。
(紹介者:白桃)
それでは、次回もお楽しみに。
2024年2月27日
雑誌の付録いろいろ
こんにちは。久喜図書館の新聞・雑誌担当です。
日々雑誌の受入をしていると、雑誌の付録にもいろいろあるなと感じます。
埼玉県立図書館で受入を行う雑誌は原則永年保存とし、その付録もなるべく廃棄せずに保存しています。
今回はそんな付録にどんなものがあるか、写真とともにご紹介します。
雑誌に貼り付ける付録
雑誌の受入を行う際は、原則として雑誌本体に付録を貼り付けることとなっています。
こうすることで貸出を行う際に、雑誌とともに付録の内容も確認することができます。
『碁ワールド』は付録がついていることが多い月刊誌で、末尾に冊子を付しています。
『碁ワールド』の所蔵確認・予約はこちらから↓
https://www.lib.pref.saitama.jp/winj/opac/switch-detail-iccap.do?bibid=1200000614
雑誌に貼り付けることができない付録
原則通り、付録を雑誌に貼り付けられない場合があります。
その場合は書庫に保管をしています。
雑誌本体には付録を書庫に別置する旨をシールで表示しています。
別置した付録は貸出できませんが、館内でご覧になることはできます。
写真の『ゴルフトゥデイ』2022年11月号の所蔵情報・予約はこちら↓
https://www.lib.pref.saitama.jp/winj/opac/switch-detail-iccap.do?bibid=2298057060
例えば『サイクルスポーツ』2023年5月号には、自転車のメンテナンスブラシが付いており、書庫に別置しています。
写真の『サイクルスポーツ』2023年5月号の所蔵情報・予約はこちら↓
https://www.lib.pref.saitama.jp/winj/opac/switch-detail-iccap.do?bibid=2298063879
『サイクルスポーツ』の付録は本体に付けられないことが多く、書庫には歴年の付録が蓄積されています。
先日は公式SNSでもその様子を発信しましたので、まだ見ていないという方はこちらからご覧ください。
(https://twitter.com/saitamaken_lib/status/1756940413712396444)
おわりに
雑誌の付録についていくつか事例を紹介しましたが、いかがだったでしょうか。雑誌によっていろいろな付録があることを改めて認識できたのではないでしょうか。
埼玉県立図書館で受入を行う雑誌は、受入ルートに書店等からの購入、団体や個人からの寄贈、県内市町村立図書館等からの移管という3つのルートがあります。購入雑誌はもちろんのこと、寄贈、移管雑誌についてもなるべく付録がある状態で保存できるように収集しています。
雑誌は発行された時代の世相を表す資料として非常に貴重です。例えば、少し前の時代の雑誌にはフロッピーディスクがついていることもありましたが、今ではフロッピーディスクを読み取る機械を持っている人は少ないかと思います。
『I/O = アイオー』の所蔵確認・予約はこちらから↓
https://www.lib.pref.saitama.jp/winj/opac/switch-detail-iccap.do?bibid=1200000643
雑誌本体の装丁や記事はもちろんのこと、付録にも着目して資料利用をしてみてはいかがでしょうか。今は当たり前のものも、20年30年と時が経過して確認してみると、「あの時こんなものもあったな」と思えるようになると思います。発行から2年以内の雑誌及びその雑誌本体に付された付録以外は、資料保存のため館内利用に限っております。貸出ができない資料も職員にお声がけいただき、ご覧いただければと思います。
2024年2月6日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『お菓子の日本語文化史』
(前田富祺著 和泉書院 2023)
<所蔵館:久喜図書館 814/オカ >
私達の生活を楽しく彩ってくれるお菓子。そのお菓子を言葉の面から深堀したのがこの本である。お菓子は五十音順の項目で配列されているので、気になる項目をつまみ食いするのもよし、完食して蘊蓄を深めるのもよし。
文中に引用されている文学作品名が巻末にまとめられているので、お菓子が登場する文学作品を食してみるのも楽しいかもしれない。
表紙や口絵のイメージに比べて中身は濃厚なので、早食いせずにゆっくりと味わいたい。
(紹介者:M.O)
■No.2■
『必勝法の数学』
(徳田雄洋著 岩波書店 2017)
<所蔵館:久喜図書館 417.2/ヒツ>
ゲームに必ず勝てる方法はあるのだろうか? この本は、必勝法の研究に没頭した20世紀の科学者たちが明らかにした原理を紹介するものである。
主に扱うのは2人で対戦するタイプのゲームで、山くずしやオセロ、サッカーのPKなど、さまざまなものを数学的に解説している。読めばゲームで負けなしになれるかもしれない。
本書によると、子どもが2人のチェスチャンピオンと同時に対戦して、片方には負けない方法があるそうだ。どんな理論か気になった方は、ぜひ手に取って確かめてみてほしい。
(紹介者:T.K)
■No.3■
『百』
(色川武大著 新潮社 1982)
<所蔵館:久喜図書館 イ>
色川武大(1929-)には、阿佐田哲也名義で『麻雀放浪記』などの作品もあるが、『百』は色川武大名義の作品である。
弟の事故から始まる「連笑」、父が母を突き飛ばしたという話から始まる「百」、退役軍人だった父の老いを描いた「ぼくの猿 ぼくの猫」、「耄碌した」父を病院に入れるかどうかという「私」の葛藤が描かれる「永日」が収録されている。
表題作「百」では、老いた父親が見る幻や幻聴が、作品の終わりに置かれている。紙おむつの話など現実的な描写が続いていたはずなのに、読後には、不思議と幻想的な余韻が残る。静かで、短くて、美しい小説だと思う。
(紹介者:Y.M)
それでは、次回もお楽しみに。
2023年12月26日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『ムシの考古学』
(森 勇一/著 雄山閣 2007)
<所蔵館:久喜図書館 457.8/ムシ >
遺跡から出土するのは石器や土器ばかりでない。本著では、日本各地の遺跡で発見された昆虫化石の種を特定し、その昆虫の生態から、当時の社会や生活環境を復元する。
例えば、鎌倉時代の遺跡からいくつも発見された謎のかたまり。これは土と大量の畑作害虫で構成されており、当時の人々が畑に大発生した虫を採って集めて穴に埋めて処分したのである。
昆虫化石からは、文献史料などでは分からない、当時の人々のリアルな暮らしを窺い知ることができる。
(紹介者:C・K)
■No.2■
『世界を変えた6つの「気晴らし」の物語 』
(スティーブン・ジョンソン/著 朝日新聞出版 2017)
<所蔵館:久喜図書館 502/セカ>
動物は生存のための技術向上に力を入れるが、人間はなぜかそれ以外の技術や事柄に力を入れることがある。
この本では生存には必要のないはずの人間の気晴らしが技術や産業へ与えた影響を紹介する。
例えば人間は古代より音楽を楽しむための技術を熱心に磨いた。この熱意は最初のコンピュータが作成される千年も前にはプログラミング可能な水力オルガンを作成する。また中世の女性達の服のへの気持ちが百貨店という新しい買い物スタイルを生み出していく様子を紹介する。
(紹介者: T・O)
■No.3■
『食べる西洋美術史「最後の晩餐」から読む』
(宮下規久朗/著光文社 2007)
<所蔵館:久喜図書館 702.3/タヘ>
宗教画というと近寄り難さを感じるかもしれないが、食事風景といえば印象はがらりと変わる。
著者は、ルネサンス期から近代までの西洋美術を「食」という視点から見つめ直していく。食に傾ける情熱では引けを取らないはずの日本や中国では、なぜ近代になるまで食事風景が描かれなかったのか。粗食を善としながら晩餐の光景を繰り返し描くのはなぜなのか。
西洋美術史のみならず、キリスト教文化の入門にもおすすめしたい一冊である。
(紹介者:R・M)
それでは、次回もお楽しみに。