図書館ブログ
2025年11月9日
こんな本あります!ー久喜図書館の書棚からー
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。

さて、今月は...
■No.1■
『怪を志す 六朝志怪の誕生と展開』 (佐野誠子/著 名古屋大学出版会 2020)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:923.4/サノ014>

妖怪や怪談といった説明のつかない話は、日本に限らずどの国にもあり、中国にも「志怪」と分類されて存在している。「怪を志(しる)す」と読み下すとおり、かつて起きたという不可思議な出来事を記したものが分類されている。
本書の前半は、仏教が浸透する以前の中国における志怪を分析し、後半では、仏教信徒が志怪の形式を利用して記録した仏教志怪について論じている。もしかすると後半で引用される志怪の方が、前半よりもおもしろい、と感じるかもしれない。なぜなら祈れば良いことがあり、戒律を破れば罰を受けるという因果応報があるため、現代人にとっても寓話のようで理解しやすいからである。
本書を読んでいると、ストーリーが持つ力を考えさせられるとともに、人間が書く以上、そこには意志があり、完全に客観的な文章などない、ということを思い出させてくれる。
(紹介者:R・M)
■No.2■
『星空をつくる機械 プラネタリウム100年史』(井上毅/著 KADOKAWA 2023)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:440.76/ホシ>

大きなドームに満天の星空を再現する「プラネタリウム」。昼でも夜でもきれいな星々を眼前に表示するこの夢のような機械が、どのように誕生したかご存知だろうか。
本書は、日本標準時子午線の通る兵庫県明石市の天文科学館館長の著作である。天文学の変遷と近代プラネタリウムの誕生、国内外におけるプラネタリウム開発・発展の歴史が1冊にまとめられている。天文学というと難しく感じるかもしれないが、25年以上星空の話をし続けてきた著者の経験を交えた解説が、やさしく語りかけ、理解を深めてくれる。プラネタリウムのルーツである「天球儀」の紹介ページには、先の大阪万博でも展示された「ファルネーゼのアトラス像」が登場し、興味深い。
近代プラネタリウムは、今から約100年前にドイツで誕生。日本でも1930年代に初めてプラネタリウムが設置されたという。読後には、現在300あるという日本のプラネタリウムを、本書を片手に巡ってみたくなる。
(紹介者:S・I)
■No.3■
『2.5次元学入門』(須川亜紀子/編 青土社 2024)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:772.1/ニテ>

2次元と3次元の間にある概念を表す、「2.5次元」。近年、新たなエンターテインメントとして、舞台やミュージカルなどの芸術分野にこの語は普及しつつある。本来交わることのない次元の壁を越えた文化とは、一体どのようなものなのだろうか。
本書は、「物語のキャラクターにおける表現」と「応援するファンとの関わり」という2部構成となっている。実際の漫画のページやイベントの様子を例に挙げることで、2.5次元という特殊な空間を多角的な視点から論じている。架空のキャラクターを人間の役者が演じ、3次元空間の存在として確立する過程はとても興味深い。「.5」という狭間の次元だからこそ生み出される表現の広がりを感じる一冊である。
次元を超越した新たな文化について、知見を深めるのはいかがだろうか。
(紹介者:C・K)
それでは、次回もお楽しみに。
2025年10月9日
【埼玉県立図書館デジタルライブラリー】をご存じですか? Part2
こんにちは! 熊谷図書館 地域・行政資料担当です。
前回は【埼玉県立図書館デジタルライブラリー】について、基本的なことを紹介しました。
今回は、デジタルライブラリーの資料についてお伝えしていきます!
【埼玉県立図書館デジタルライブラリー】にはどんな資料があるのか、探すのが難しい方もいらっしゃいますよね。
そこで、図書館ではおすすめの資料を紹介する「WEB資料展」を開催しています!
資料展はその図書館に行かなければ見られない? そんなことはありません! WEB資料展なら、実際に図書館に行かなくても、WEB上でそのテーマの資料を見たり読んだりすることができるんです。
WEB資料展は県立図書館ウェブサイトのトップページにショートカットボタンがあります!

ではここで、過去のWEB資料展を振り返ってみましょう!
【WEB資料展】「埼玉の自慢したい風景」
現在は閉館した県立浦和図書館で、2012年度開催された展示「自慢したい風景」を、WEB資料展として再現! 名所・史跡の風景、産業の風景、伝統芸能・祭の風景を、当館所蔵の古写真と現在の写真とで見比べることができます。たとえば、秩父市の羊山公園。今は芝桜で有名ですが、戦前の写真には羊を飼育している風景が見られます。羊山公園の名前の由来になったそうです。あなたの自慢したい風景はどこですか?
【WEB資料展】「いろはで発見!郷土かるたに見る埼玉名物」
子どもの頃、さいたま郷土かるたで遊んだ人も多いのではないでしょうか。私もその一人で、埼玉県についてはこのかるたで遊びながら勉強したといっても過言ではありません! 今でも読み札の五七五は覚えています! ここでは『彩の国21世紀郷土かるた』(2002年発行)に読まれた埼玉を代表する46の名物を、かるたと図書館所蔵資料を使って紹介しています。私の頃とは違うわ! というあなた、大丈夫です。『さいたま郷土かるた』(1982年発行)もデジタル化されているので見ることができますよ!
【WEB資料展】「『忍名所図会』を歩く」
忍城といえば、小説『のぼうの城』が映画化され、一躍有名になりましたよね。天保年間(1830~1843)の忍城周辺の名所・旧跡や事項が書かれた資料が『忍名所図会』です。WEB資料展では『忍名所図会』の中からいくつかピックアップして紹介しています。その中には、今は丸墓山古墳として知られる「麿墓山」があります。忍城水攻めの時には石田三成が本陣を構えたという文と共に麿墓山を含む忍城眺望が描かれているのを紹介。また、熊谷を流れる星川には蛍が見られたとの記述もあり、忍城周辺の当時の様子を知ることができますよ!
【Web資料展】「江戸の出版物と巡る秩父霊場」
江戸時代に人気のあった札所巡り。西国・坂東と並ぶ3大観音霊場の一つである秩父霊場の札所巡りに関する資料を紹介しています。実際に使われた納経帳(御朱印帳)の紹介から始まり、秩父霊場についての解説、当時使われた絵図や旅に役立つ道中記などの紹介があり、なかでも目を引くのが、江戸時代に霊場巡りのガイドブックとして人気を博した『観音霊験記』。浮世絵の揃物で、上部には奉納額の体裁の中に札所の伽藍風景の概略があり、下部には札所にまつわる逸話が描かれています! ぜひ、デジタルライブラリーで秩父札所34カ所の浮世絵をご覧ください!
【Web資料展】「古典籍・絵図に見える埼玉の河川の風景」
埼玉県は荒川・利根川の二大河川をはじめ、県全体に占める河川面積の割合が全国2位の「川の国」です! 前述の『利根川図志』をはじめとする「利根川」に関する資料や、二大河川のもう一つ「荒川」に関する資料を紹介。そして、これまで行われてきた治水・利水に関する資料も紹介しています。それから、埼玉県で河川を使った戦の記録といえば、忍城の水攻めですね! 講談で語られる忍城水攻めの資料もありますよ!
【Web資料展】「集え!埼玉各地の地図」
この年、新たに公開した埼玉県内各地の地図を紹介! 主に、大正から昭和の絵図、地図を掲載していますので、現在の地図と比較してみるのも面白いですね。また、ジャパンサーチで見ることができる埼玉県内の地図コレクションについても紹介しています!
今年度も鋭意作成中ですのでお楽しみに!
みなさんが、ここで公開しているデジタル化資料やデジタルデータを使いたいなぁというときは、「埼玉県立図書館所蔵デジタルデータ利用規約」をご確認ください。また、利用についての「よくある質問」をまとめていますので、こちらもご覧ください。
最後に、最近の資料活用例をご紹介します!
現在、埼玉県立文書館で行われている「企画展 北武蔵の剣術-幕末から近代へ-」のポスター・チラシのタイトル背景画像は、埼玉県立図書館所蔵資料の写真を二次利用しているんですよ!12月21日(日)まで開催していますので、ぜひ足を運んでみてください!
いかがでしたか? みなさんも気軽に【埼玉県立図書館デジタルライブラリー】を利用してみてくださいね!
2025年10月6日
【埼玉県立図書館デジタルライブラリー】をご存じですか? Part1
こんにちは! 熊谷図書館 地域・行政資料担当です。
突然ですが、みなさんは【埼玉県立図書館デジタルライブラリー】をご存じですか?
県立図書館ウェブサイトのトップページにショートカットボタンがあります。

今回はこの【埼玉県立図書館デジタルライブラリー】についてご紹介します♪

まず、デジタルライブラリーでは何ができるのでしょうか?
デジタルライブラリーでは、埼玉県立図書館が所蔵する著作権保護期間を満了した古典籍、絵図、古写真等をデジタル化した資料を見ることができます。資料をデジタル化すると壊れそうな古い資料や貴重な資料も気軽に楽しむことができるのです。
どんな資料があるのかは「デジタル化資料一覧」をご覧ください。
その中から例をあげてみると・・・
『利根川図志 第1巻』(赤松宗旦著 山田屋佐助 1855)には、こんなカッパのイラストが載っていたり、

『利根川図志 第6巻』(赤松宗旦著 山田屋佐助 1855)には、アシカのイラストも載っています。

この『利根川図志』は、江戸時代末期の利根川中・下流域を紹介している資料で、のちに柳田国男により解題も書かれています。
このほかに、埼玉県立図書館が収集したインターネット上に公開されている県内の刊行物等(デジタル行政資料)も読むことができます。
たとえば・・・
『統計からみた埼玉県のすがた 2025』(埼玉県総務部統計課編 埼玉県総務部統計課 2025)には、「埼玉県の面積・自然」や「埼玉県の文化施設・スポーツ施設」などの基本データが載っており、埼玉県について調べたいときに便利です!
デジタルライブラリーの資料は、図書館に来なくても自宅のパソコンなどでいつでも自由に見ることができます!
「デジタルライブラリー」トップページにある「簡単検索」にキーワードを入れて検索してみてください。
また、詳しく調べたい方には「詳細検索」がおすすめです。
検索方法については「埼玉県立図書館デジタルライブラリー利用案内」をご覧ください!
動画でわかりやすく説明されていますよ。
検索以外にも、テーマ別で調べることができるように、いくつか代表的なテーマをまとめています。「こちら」のリンクからどうぞ。「埼玉の名所」など5つのテーマをピックアップしています。気になるテーマがあったらぜひ調べてみてくださいね。
今回はここまで。
次回Part2では、デジタルライブラリーにはどんな資料があるのかお伝えします! お楽しみに♪
2025年9月26日
こんな本あります!ー久喜図書館の書棚からー
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。

さて、今月は...
■No.1■
『自動販売機の文化史(集英社新書)』 (鷲巣力/著 集英社 2003)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:582.4/シト>

街中を歩くと、必ずと言っていいほど自動販売機を目にする。そんな自動販売機はいつからあったのかと言うと、2000年以上前の古代エジプトの頃にはあったのだという。アレクサンドリアの神殿にあったという「聖水自動販売機」は、入れた硬貨の重さによって「てこ」が働き、水が出るという単純な機構ではあるが、人を介さずにサービスを提供するという発想がそんな昔からあったということ自体が興味深い。
この本では、自動販売機の発祥から始まり、19世紀のヨーロッパ、20世紀のアメリカと世界的に自動販売機が発達していく様子と、日本において明治時代から現代に至るまで自動販売機が普及する経緯を説明している。また、国ごとに自動販売機がどのように普及しているか、なぜ日本が自動販売機大国となったのかについても考察している。
2003年に刊行された新書なので、20年以上前の本であるが、現代の自動販売機の機能を垣間見ることができる。例えば、携帯電話をかざすことで自動販売機を利用することができるサービスが実験的に行われていることが紹介されており、将来的にキャッシュレス・システムが普及することにも言及されている。
また、今ではほとんど見かけなくなってしまった酒やたばこの自動販売機についても多くのページでの記述がされていることから、それらを自動販売機で売ることが多かったということが見てとれる。(紹介者:K.M) ※この資料は2025年10月時点で出版流通していません
■No.2■
『埼玉の自然誌』(埼玉県立自然の博物館/編 埼玉県立自然の博物館 2020)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:462/サイ>

埼玉県は西に関東山地、東に関東平野を配し、山地・盆地・丘陵・台地・低地と変化に富んだ地形を持つ、生物相の豊かな地域だ。面積は国土の約1パーセントと狭いながら、多様な自然を観察することができる。本書は埼玉県内の自然を観察するためのフィールドガイドである。「地質」と「生物」の二章から構成されており、「地質」は観察できる地層の時代ごとに、「生物」は低地や丘陵、亜高山といった標高ごとに、自然の成り立ちや仕組み、人と自然の関わりについて学ぶことのできる計27か所を紹介している。本書の特徴は、各場所の散策やドライブのモデルコースと所要時間を掲載していることだ。駐車場やトイレの有無、道の詳細も記しており、実用的な作りになっている。これからの行楽の季節、本書を参考に自然観察に出かけてみてはいかがだろうか。(紹介者:A.Y)
■No.3■
『辞書編集、三十七年』(神永曉/著 草思社 2018)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:813.1/シン>

知らない言葉に出会った時、辞書を引く人は少なくなってしまったのではないだろうか。
この本は、言葉の世界で三十七年、辞書編集に携わってきた著者の辞書をめぐるエッセイである。「発刊と同時に改訂作業がスタートする」という遠大な辞書編集作業。執筆者や読者との交流を通じたエピソードや関わってきた多数の辞書の思い出を軽やかに綴っている。
読み終えた時には、ちょっとした辞書通になった気分で、辞書を引いてみたくなる。(紹介者:M.O)
それでは、次回もお楽しみに。
2025年9月4日
数字で見る!埼玉県立図書館のレファレンス・サービス
レファレンス・サービスは、「調べ物をしたい」「疑問を解決したい」といった調査のご相談に応じ、図書館が資料や情報を提供するサービスです。今回は、数字を軸に、埼玉県立図書館のレファレンス・サービスをご紹介します。
年間5,000件以上の調査の依頼に対応
埼玉県立図書館では、令和6年度25,215件の資料や調査に関するご相談を受けました。そのうち約5,000件は「事項調査」と呼ばれる特定のテーマについての調査のご相談です。
160万冊の蔵書と20種類以上のデータベース
埼玉県立図書館には、約160万冊の蔵書、20種類以上のデータベース、160タイトル以上の新聞、2700タイトル以上の雑誌があります。紙媒体とデジタル資料を組み合わせた調査が可能な点は、図書館の強みです。職員のうち約60名が調査を担当し、複数名で連携して1つの調査に対応することで、多様な視点から最適な調査回答を導き出すよう努めています。
96%の満足度を達成
令和6年度のレファレンス・サービスに関するアンケート結果によると、図書館が提供した調査回答に「満足」「やや満足」と答えた方は約96%にのぼります。利用者からは、「インターネットの情報だけではたどり着けない情報だったので助かった」「ここまで調べてくれるとは思ってもみなかった」といった声が寄せられています。
レファレンス協同データベース(レファ協)に約10,000件のデータ提供
調査に関わる情報の一部(以下、調査事例)を、プライバシーに配慮したうえで、国立国会図書館が運営する「レファレンス協同データベース(レファ協)」に提供しています。これまで約10000件の調査事例を提供しました。埼玉県立図書館が登録した調査事例は、閲覧数が全国1位(令和6年)を記録するなど、全国的にも広く活用されています。
17年連続で国立国会図書館から「御礼状」をいただきました
国立国会図書館が運営するレファレンス協同データベースへの貢献が評価され、埼玉県立図書館は平成21年から17年連続で「御礼状」をいただきました。
SNSで話題!5万いいねを獲得した調査事例も
埼玉県立図書館がレファレンス協同データベース事業に提供した調査事例の中には、SNSやメディアで話題となったものもあります。例えば、「『速い』『早い』のように漢字で書き分けられる言葉がある一方で、『遅い』にはなぜないのか?」という質問は、回答・出典とともに調べ方が詳しくまとめられていることなども話題になり、令和7年3月には、この事例に関連した投稿が、SNSで50,000以上の「いいね」を集めました。
調査のご相談は事前の利用登録不要
埼玉県立図書館の調査依頼は、来館、電話やFAX、WEBフォームで受け付けています。事前の利用登録は不要で、WEBフォームからの依頼の場合は、原則1週間以内にメールで回答をお届けします。「こんなこと聞いていいのかな?」と思ったときこそ、ぜひご相談ください。県立図書館は、皆さまの「知りたい」に全力でお応えします!
