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資料紹介

2024年2月6日

こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―

こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。

2024年1月書評

さて、今月は...

■No.1■

『お菓子の日本語文化史

(前田富祺著 和泉書院 2023)

<所蔵館:久喜図書館 814/オカ >

「お菓子の日本語文化史」書影

私達の生活を楽しく彩ってくれるお菓子。そのお菓子を言葉の面から深堀したのがこの本である。お菓子は五十音順の項目で配列されているので、気になる項目をつまみ食いするのもよし、完食して蘊蓄を深めるのもよし。

文中に引用されている文学作品名が巻末にまとめられているので、お菓子が登場する文学作品を食してみるのも楽しいかもしれない。

表紙や口絵のイメージに比べて中身は濃厚なので、早食いせずにゆっくりと味わいたい。

(紹介者:M.O)

■No.2■

『必勝法の数学

(徳田雄洋著 岩波書店 2017)

<所蔵館:久喜図書館 417.2/ヒツ>

「必勝法の数学」書影

ゲームに必ず勝てる方法はあるのだろうか? この本は、必勝法の研究に没頭した20世紀の科学者たちが明らかにした原理を紹介するものである。

主に扱うのは2人で対戦するタイプのゲームで、山くずしやオセロ、サッカーのPKなど、さまざまなものを数学的に解説している。読めばゲームで負けなしになれるかもしれない。

本書によると、子どもが2人のチェスチャンピオンと同時に対戦して、片方には負けない方法があるそうだ。どんな理論か気になった方は、ぜひ手に取って確かめてみてほしい。

(紹介者:T.K)

■No.3■

『百

(色川武大著 新潮社 1982)

<所蔵館:久喜図書館 イ>

「百」書影

色川武大(1929-)には、阿佐田哲也名義で『麻雀放浪記』などの作品もあるが、『百』は色川武大名義の作品である。

弟の事故から始まる「連笑」、父が母を突き飛ばしたという話から始まる「百」、退役軍人だった父の老いを描いた「ぼくの猿 ぼくの猫」、「耄碌した」父を病院に入れるかどうかという「私」の葛藤が描かれる「永日」が収録されている。

表題作「百」では、老いた父親が見る幻や幻聴が、作品の終わりに置かれている。紙おむつの話など現実的な描写が続いていたはずなのに、読後には、不思議と幻想的な余韻が残る。静かで、短くて、美しい小説だと思う。

(紹介者:Y.M)


それでは、次回もお楽しみに。

2023年12月26日

こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―

こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。

展示風景.jpg

さて、今月は...

■No.1■

『ムシの考古学

(森 勇一/著 雄山閣 2007)

<所蔵館:久喜図書館 457.8/ムシ >

ムシの考古学.jpg

遺跡から出土するのは石器や土器ばかりでない。本著では、日本各地の遺跡で発見された昆虫化石の種を特定し、その昆虫の生態から、当時の社会や生活環境を復元する。

例えば、鎌倉時代の遺跡からいくつも発見された謎のかたまり。これは土と大量の畑作害虫で構成されており、当時の人々が畑に大発生した虫を採って集めて穴に埋めて処分したのである。

昆虫化石からは、文献史料などでは分からない、当時の人々のリアルな暮らしを窺い知ることができる。

(紹介者:C・K)

■No.2■

『世界を変えた6つの「気晴らし」の物語

(スティーブン・ジョンソン/著 朝日新聞出版 2017)

<所蔵館:久喜図書館 502/セカ>

世界を変えた6つの「気晴らし」の物語.jpg

動物は生存のための技術向上に力を入れるが、人間はなぜかそれ以外の技術や事柄に力を入れることがある。

この本では生存には必要のないはずの人間の気晴らしが技術や産業へ与えた影響を紹介する。

例えば人間は古代より音楽を楽しむための技術を熱心に磨いた。この熱意は最初のコンピュータが作成される千年も前にはプログラミング可能な水力オルガンを作成する。また中世の女性達の服のへの気持ちが百貨店という新しい買い物スタイルを生み出していく様子を紹介する。

(紹介者: T・O)

■No.3■

『食べる西洋美術史「最後の晩餐」から読む』

(宮下規久朗/著光文社 2007)

<所蔵館:久喜図書館 702.3/タヘ>

食べる西洋美術史.jpg

宗教画というと近寄り難さを感じるかもしれないが、食事風景といえば印象はがらりと変わる。

著者は、ルネサンス期から近代までの西洋美術を「食」という視点から見つめ直していく。食に傾ける情熱では引けを取らないはずの日本や中国では、なぜ近代になるまで食事風景が描かれなかったのか。粗食を善としながら晩餐の光景を繰り返し描くのはなぜなのか。

西洋美術史のみならず、キリスト教文化の入門にもおすすめしたい一冊である。

(紹介者:R・M)


それでは、次回もお楽しみに。

2023年11月7日

こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―

こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。

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さて、今月は...

■No.1■

『極楽征夷大将軍

(垣根涼介著 文藝春秋 2023)

<所蔵館:久喜図書館 913.6/カキ005 >

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太平記とは異なる新たな足利尊氏を提示した、長大な歴史小説。逆に、後醍醐天皇・楠木正成・新田義貞等の誰もが知っている英雄を従来通りに描いているため、新解釈に説得力を持たせ安心感を与えている。実は戦べたな高師直と弟の足利直義の活躍と苦悩を軸に、室町幕府ができるまでを資料に基づき実に実に丹念に描いている。

この小説は、戦記物として不可能なことを成し遂げていくことを描くことで痛快性や娯楽性を求めているのではなく、人の助け合いや心の繋がりを大きなテーマにしていると考えるが、どうだろうか。

一気に読むにはやや長すぎるので、じっくり腰を据えて取り組む1冊。かっこいい足利尊氏を期待する方にはお勧めできない。(第169回直木三十五賞受賞作品)

(紹介者:バリアフリー読書推進担当)

■No.2■

『かわいい仏像 たのしい地獄絵 -素朴の造形-』

(須藤弘敏、矢島新著 PIE International 2015)

<所蔵館:久喜図書館 718.3/カワ>

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仏像といえば、まず思い浮かべるのは奈良の大仏や阿修羅像だろう。だが、この本では、そういった誰もが知っている仏像をとりあげていない。仏師の手によるものではないが、東北の地で、今なお人々から慕われている民間仏を紹介している。ポケットにでも入れておきたくなってしまうような素朴でかわいい仏像だ。常に飢えや病気の苦しみにさらされていた農民たちにとって、なぜ、やさしくて、かわいいのかを説く。

後半では、死への恐怖、とりわけ地獄へ落ちるかもしれないと思っていた庶民に身近な地獄絵を紹介している。あまり恐ろしさを感じない地獄絵も民間の画工によるものだ。

写真はすべてカラーである。埋もれた美を掘り起こしたい、一方で、これらを大事に守り続けたいという著者の心が伝わる1冊である。

(紹介者:情報・地域協力担当 M.S)

■No.3■

『わたしはこうして執事になった

(ロジーナ・ハリソン著 新井潤美監修 新井雅代訳 白水社 2016)

<所蔵館:久喜図書館 591.0233/ワタ>

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日本でも近年、アニメや漫画、ドラマなどで認知されるようになった執事。19世紀のヴィクトリア朝時代のイギリスで多く活躍していたが、時代とともに下火となり、現代ではあまりなじみのない職業である。本書では、20世紀初頭から1960年代までの間に、実際に使用人として貴族のお屋敷で働いていた5人の男性それぞれの体験談がリアルに描かれている。

執事となった者は、雑用係や下男、従僕などを経て、その地位を掴んだが、誇りを持って仕事を行っていたということが窺える。従うだけではなく、時として意見を言うこともある主人とのやり取りが面白く、またお互いの信頼関係を感じることができる。

当時のイギリスの使用人たちだけではなく、貴族の内実をも垣間見ることができる貴重で興味深い資料だろう。

(紹介者:芸術・文学資料担当 S)


それでは、次回もお楽しみに。

2023年10月7日

こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―

こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。

書架

さて、今月は...

■No.1■

『虫から死亡推定時刻はわかるのか? 法昆虫学の話

(三枝聖著 築地書館 2018)

<所蔵館:久喜図書館 請求記号:498.9/ムシ>

虫から死亡推定時刻はわかるのか?

本書は、不幸にして人間より先に昆虫に発見された死者(孤独死や遺棄された殺人事件の被害者)について、死体に定住する昆虫(主にハエの幼虫)からいつ亡くなったかを推定する自称「法昆虫学者」によるお仕事解説書である。
最後の生存確認情報や解剖所見では判別できない場合にお呼びがかかり、第一発見者である昆虫から証言を聞き取るのが「法昆虫学者」の仕事らしい。法医解剖室で昆虫を採集し、標本を作り、死体発見現場の環境や天候、解剖室への移動時間を鑑みつつ種類を特定、成長段階や個体数から死後経過時間を推定していく。生命活動を終えてから土に還るまでの観察実験も興味深い。

虫のことを見るのも考えるのも嫌という方にはおすすめはしないが、人間も他の生物と同じように自然の循環のなかにいる、という当然のことに思いいたる。
一般人とていつなんどき法昆虫学にお世話になるかわからない。このニッチな世界をのぞいてみてほしい。

(紹介者:神原陽子)

■No.2■

『ささやく恋人、りきむレポーター 口の中の文化(もっと知りたい!日本語)

(定延利之著 岩波書店 2005)

<所蔵館:久喜図書館 請求記号:811.1/ササ>

ささやく恋人、りきむレポーター

美味しい料理に、つい唸る。誰かにお願いメールをする時に、土下座の絵文字を使う。そんな日本語話者にとってはごく普通の光景に、他言語文化の視点からスポットライトを当てて、新たな側面を見せてくれる一冊。
本書では、言語学者である著者が、私たちが会話をする上で日常的に・無意識のうちに行っている事象をつぶさに観察し、音声コミュニケーションにおける気持ちと音声の結びつきを分析している。
「えっと」「あの」といったつなぎ言葉(フィラー)や、つっかえ、イントネーションとアクセントの変化、りきみ、空気すすりといった行為には、存在理由と意味があった。
豊富な事例紹介と軽快な語り口に、つい読む姿勢が前のめりになる。

(紹介者:S・O)

■No.3■

『呼べばくる亀 亀、心理学に出会う

(中村陽吉著 誠信書房 1991)

<所蔵館:久喜図書館 請求記号:487.9/ヨ>

呼べばくる亀

飼い犬は名前を呼ばれると駆け寄ってくるが、亀の場合はどうだろうか。本書は、ある心理学者と「カメちゃん」ことペットの亀の交流や心理学的実験の記録である。
カメちゃんは飼い主を探して部屋を移動する。餌付けしたわけではないのにただ甘えたくて飼い主に歩み寄り、握手するように手を差し出すこともある。
なぜ亀とこのような信頼関係を築くことができたのか?本書を読むと、その秘訣は心理学者ならではの観察力にあることがわかる。時に客観的に、時に愛情たっぷりに、亀の心理や行動を分析したユーモラスな一冊。

(紹介者:M・M)


それでは、次回もお楽しみに。

2023年8月8日

こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―

こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。

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さて、今月は...

■No.1■

『じっくり見たい『源氏物語絵巻』

(佐野みどり著 小学館 2000)

<所蔵館:久喜図書館 請求記号:721.2/シツ>

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「国宝源氏物語絵巻」と言えば日本の四大絵巻の一つで、その成立は十二世紀中ごろと推定される。本書は現存する「国宝源氏物語絵巻」を実物大図版を用いて解説している。源氏物語の登場人物やあらすじについても紹介されており、源氏物語になじみのない読者でも安心して読み進めることができ
国宝源氏物語絵巻はただ物語を絵画化しているのではなく、絵画がもたらす効果によって登場人物の心情を描き出している。そこに本作品の面白さがある。作者の源氏物語への深い理解と共感が生んだ最高傑作を、あなたも堪能してみてはいかがだろうか

(紹介者:S・O)

■No.2■

『宮沢賢治はなぜ教科書に掲載され続けるのか

(構 大樹著 大修館書店 2019)

<所蔵館:久喜図書館 請求記号:910.268/ミヤ003>

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やまなし」、「永訣の朝」、「雨ニモ負ケズ」など、私たちが教科書で読み親しんできた宮沢賢治の作品は多い。
本著は宮賢治の作品が、過去から現代に至るまで幅広く受容され続けてきた理由について、時代背景や同時代評を用いながら考察する。戦時下における「雨ニモ負ケズ」の評価の高まり、また近年のポップカルチャーに登場する賢治作品については、特に興味深く読んだ。

宮沢賢治について、時代性という切り口から考える1冊。かつて読んだ作品を懐かしみながら、手にとってみてはいかがだろうか。

(紹介者:M・T)

■No.3■

『すごすぎる天気の図鑑

(荒木健太郎著 KADOKAWA 2021)

<所蔵館:久喜図書館 請求記号:451/スコ 児童書>

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夏になると、空が気になる機会が増える人も多いのではないだろうか。青い空に湧き立つ入道雲は、夏の風物詩の一つだ。近年ではゲリラ豪雨や線状降水帯など、命に関わる話題も多い。本書はそんな天気に関する様々なトピックについて、イラストや例え話で分かりやすく解説している。児童書ではあるが、大人でも読み応えのある内容となっている。
著者によると、坊主頭の入道雲は成長すると髪の毛が生え、別の名前の雲になるそうだ。これがどういうことなのか、ぜひ本書で確認してみてほしい。他にも天気急変の予兆となる雲や、雨が降っていない時に見られる虹など、興味深い現象を紹介している。本書を読んでから空を眺めてみると、それまでと違った景色が見えるかもしれない。

(紹介者:A・Y)


それでは、次回もお楽しみに。