2013年11月7日
古典に親しもう!ミニ展示「万葉集に詠まれた埼玉」を開催中!!
こんにちは。
浦和図書館 地域・行政資料担当です。
昨年9月5日、11月1日を「古典の日」とする法律が公布・施行されました。国民が古典に親しみ、関心を深める機会を増やそうとするものです。
そこで、埼玉資料室では『万葉集』に関する郷土資料35冊のミニ展示を企画しました。
モミジ&イチョウの折り紙で、秋色に染めてみました
『万葉集』は全20巻 約4,500首から成る、現存する日本最古の歌集です。
埼玉県にゆかりのある歌は、主に「東歌(あずまうた)」と「防人歌(さきもりうた)」に分類されています。なかでも男女や夫婦間の心情を詠んだ「相聞歌(そうもんか)」が多く、それはそれは情熱的なのです!
ここでは、その一部をご紹介したいと思います。
※本文・訳文は、中西進 校注『万葉集 全訳注原文付(三),(四)』(講談社 1981,1983)による。
◆「東歌」...東国地域で収録された歌
埼玉の津に居る船の 風を疾み綱は絶ゆとも 言な絶えそね〈巻14 3380〉
(さきたまのつにをるふねの かぜをいたみつなはたゆとも ことなたえそね)
〔訳〕埼玉の湊(利根川の船着き場)に泊る船のように、風が強くて綱が切れてしまっても、愛のことばだけは絶えないでほしい。
〔歌碑〕行田市 前玉(さきたま)神社、小埼沼(おさきぬま)
*「埼玉」は、原文では「佐吉多萬」と万葉仮名で表記されています。
入間路の大家が原のいはゐ蔓 引かばぬるぬる 吾にな絶えそね〈巻14 3378〉
(いりまぢのおほやがはらのいはゐつら ひかばぬるぬる わになたえそね)
〔訳〕入間路にある大家が原のいわい蔓(じゅん菜か)の、つるを引けばぬるぬる続くように、私との仲を絶やすな。
〔歌碑〕越生町・坂戸市・狭山市・日高市
◆「防人歌」...九州北部沿岸の防備に派遣された東国の兵士と、その家族の歌
足柄の御坂に立して袖振らば 家なる妹は清に見もかも <巻20 4423>
右の一首は、埼玉郡の上丁藤原部等母麿
(あしがらのみさかにたしてそでふらば いはなるいもはさやにみもかも)
〔訳〕足柄の御坂に立って袖を振ったら、家にいる妻は、はっきりと私を見るだろうかなあ。
〔歌碑〕行田市 八幡山(はちまんやま)古墳公園
色深く背なが衣は染めましを 御坂たばらばま清かに見む <巻20 4424>
右の一首は、妻、物部刀自売
(いろぶかくせながころもはそめましを みさかたばらばまさやかにみむ)
〔訳〕濃い色にあなたの衣は染めればよかった。足柄の御坂を越える時に、はっきりと見えるでしょうに。
〔歌碑〕行田市 八幡山古墳公園
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もちろん相聞歌だけでなく、景色を詠んだものもあります。
展示では、埼玉ゆかりの万葉歌についての資料や研究論文、県内の歌碑案内書などを集めました。
秋深し・・・
31文字の言葉から、古代埼玉の原風景を想像してみませんか。
―ミニ展示 「万葉集に詠まれた埼玉」―
期間:11月6日(水)~12月15日(日) ※休館日を除く
場所:浦和図書館3階 埼玉資料室入口