資料紹介
2022年3月30日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『岩波少年文庫のあゆみ1950-2020』(若菜晃子 編著 岩波書店 2021)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:J 909/イワ>
岩波少年文庫は1950年、世界の児童文学から古典の名作と現代の傑作を選び、翻訳は原作に忠実に、美しく平易な日本語を使用するという特色を掲げて創刊された。
本書では、装丁や挿絵の変遷、新訳への変更への経緯などが記され、編集者の子どもの本への熱意が伝わってくる。70年経っても、子どもたちに一生の宝となるすぐれた文学を手渡したいという思いに変わりはないことが伺える。
(紹介者: 高野)
■No.2■
『寄り添って、寄り添われて』(堺武男 著 アーツアンドクラフツ 2011)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:493.9/ヨリ>
医師である著者が、東北地方の新生児・小児医療に携わった経験を基に書かれた1冊。
NICUや外来で診療する患者やその家族との関わりから、著者が学んだことや思いが丁寧に書かれている。新生児・小児医療のお世話になったことがある人にとって、心が救われる内容が詰まっている。コロナ禍でも、NICUで小さな命が闘いながら生きていることを思い起こすために、新生児・小児医療を知らない人にこそ、手に取ってほしい本である。
(紹介者:五十嵐)
■No.3■
『二人の紅茶王 リプトンとトワイニングと・・・』(磯淵猛 著 筑摩書房 2000)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:596.7/フタ>
2019年2月、紅茶研究の大家である磯淵猛先生が急逝された。紅茶愛にあふれる先生のお話やその笑顔は、絶対に忘れない。
この紅茶をめぐるエッセイ集では、副題にもある通り、リプトンとトワイニングについて特にページが割かれている。全く異なる境遇・手法で、世界の紅茶王になった二人―。リプトンの商才や、歴代トワイニング家とイギリスの歴史。読めば、普段飲んでいる紅茶の味わいが、少し違って感じられるかもしれない。
(紹介者:吉田)
それでは、次回もお楽しみに。
2022年2月1日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、図書館職員が所蔵する図書をご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『大河ドラマをつくるということ』(大石学、時代考証学会編 名著出版 2012)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:778.8/タイ>
渋沢栄一に畠山重忠。埼玉ゆかりの偉人が相次いで大河ドラマに登場する。彼らや活躍した時代をどう描き出すか。それには時代考証が欠かせない。本書は時代考証学会によるシンポジウムの記録である。考証会議を重ね脚本が修正される過程、歴史学者だけではなく衣装や照明担当者の考証など、取り上げる作品は違えども制作現場の裏側を窺える。各地で新資料が発見されることもあるとか。大河ドラマの見かたを広げてくれる一冊。
(紹介者: 大島)
■No.2■
『昆虫の飛翔』(栗林慧著 平凡社 1981)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:D486.1 /ク>
3万分の1秒。これは、昆虫の羽ばたきを撮るために必要なシャッタースピードである。失敗と改良を重ね、著者は昆虫の飛行撮影システムを開発した。本書はその成果を収めた写真集である。鳥は飛ぶとき、肢を縮める等して空気抵抗を減らす。一方、昆虫はそんなことお構いなしに、肢や触覚を目一杯広げて飛ぶ。彼らのユーモラスかつ見事な飛翔術に、小さな昆虫の偉大さを垣間見た。身近な昆虫の知らない姿を教えてくれる一冊。
(紹介者:松本)
■No.3■
『〈いのち〉とがん』(坂井律子著 岩波書店 2019)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:491.65 /イノ>
本書は、NHKディレクターの著者が、自身の膵臓がんとの闘い・共存の日々を記した闘病記である。治療法の選択や抗がん剤の副作用による食の問題など貴重な「がんの実際の情報」を知ることができるだけでなく、いのちを見つめ直すきっかけを与えてくれる。二人に一人はがんになるという現代、がんは誰もが避けては通れない病となった。がんに関心がある人はもちろん、がんを他人事だと思っている方にも是非おすすめしたい。
(紹介者:石関)
それでは、次回もお楽しみに。
2021年11月9日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、図書館職員が所蔵する図書をご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『すぎゆくアダモ』(辻まこと著 創文社 1979)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:Ts41>
雑誌『岳人』の表紙や山岳をテーマにした画文で知られている、辻まことの「大人のためのメルヘン」だ。粗末なカヤックで架空の村を流れる架空の川の源流を目指す少年の物語をかりて、自らの背負わされた宿命(辻潤を父に伊藤野枝を母にもつ)にあらがいながら、自由人として生きた証として著されたもの(絶筆)。
哲学的な深さをもつ文と象徴的な線画による画文は、自然体で生きてゆく動力の源として、時間を重ねるほど深い感銘を呼び起こす座右の書となっている。
(紹介者: 月光仮面)
■No.2■
『不眠の悩みを解消する本』(三島和男著 法研 2015)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:498.36/ フミ>
眠りたいのに眠れない、そんな経験を持つ人も多いだろう。本書によると、悩みが続いているなら、原因の分析が正しくないか、不眠をこじらせた状態にあるからだそうだ。
読み進めると、不眠のさまざまなケースの解説、誤った生活習慣、睡眠習慣の修正方法など、分析や解決のヒントが示される。後半には、誤解も多い睡眠薬の話、欧米では定番という認知行動療法の話もある。
「眠れない」を、いっそのこと積極的に考えてみたい方に、手にしてみてほしい1冊である。
(紹介者:司書・高橋)
■No.3■
『愛情生活』(荒木陽子著 作品社 1997)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:914.6/アラ>
荒木陽子さんは写真家・荒木経惟の妻で、1990年に亡くなっている。アラーキーには、陽子さんを含め女性を被写体にした生々しい作品もあるが、夫婦の関係性というのは外からは見えない。私はこの本の「愛情生活」というタイトルは、ぴったりだと思う。日々の生活や旅行、馴れ初めなどについて書かれた言葉から、荒木経惟への愛情のようなものが感じられる作品だからだ。
(紹介者:松山)
それでは、次回もお楽しみに。
2021年9月16日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
このコーナーでは、図書館職員が所蔵する図書をご紹介します。
『生きものの持ち方』(松橋利光/著 大和書房 2015)

夏休みの自由研究などで、昆虫や動物の観察をテーマにした方は多いのではないだろうか。しかし、観察対象の生物を捕まえ、おさえておくのは案外難しい。そこで役に立つのが本書である。ペットショップオーナー、獣医師など生き物を扱うプロが、様々な生き物の正しい持ち方を教えてくれる。
昆虫好きな子どもやペットがいる方はもちろん、持ち方のコツを通してその特性・生態が学べるため、普段生き物と触れ合わない方にも楽しめる一冊である。
(紹介者:自然科学・技術資料担当 久保田)
『賢い患者』(山口育子/著 岩波書店 2018)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:490.145/カシ>
"いのち"は誰のもの?"いのち"は自分のもの。だから、治療を人まかせにしないで良い医療を利用したい。
著者は、「COML(コムル)(ささえあい医療人権センターCOML)」の活動や自らの壮絶ながん体験をとおして訴えかける。
医療従事者とのコミュニケーションの取り方や病院評価のチェックポイントは興味深い。2025年には超高齢化社会に突入する日本。これからの医療について考えるきっかけとなる一冊である。
(紹介者:情報・地域協力担当 前野)
『GOOD DESIGN AWARD 2019』(日本法人デザイン振興会/編 日本法人デザイン振興会 2020)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:D501.83/クツ>

GOOD DESIGN AWARDという事業をご存じだろうか。毎年、各分野から優れたデザインを選び、広く伝えることで、社会へ貢献しようとする事業である。
2019年度は、「結核迅速診断キット」がグッドデザイン大賞に輝いた。
本書は、重く、分厚く、初見では手に取って見ようとは思わないかもしれない。しかし、この本を読めば様々な分野で日々デザインが創造され、活用されていることが分かる。
一度、目を通すだけでもいい。掲載されている優れたデザイン商品から、日本の未来を想像してみるのはいかがだろうか。
(紹介者:バリアフリー読書推進担当 T.K)
2021年7月9日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
このコーナーでは、図書館職員が所蔵する図書をご紹介します。
『孤独なバッタが群れるとき』(前野ウルド浩太郎/著 東海大学出版会 2012)

「自分もバッタに食べられたい」から始まるこの本は、研究書である。副題に「サバクトビバッタの相変異と大発生」とあるように、サバクトビバッタについて書かれている。だが、ただの研究書ではない。独特なセンスが光る文章で、彼の研究人生も書かれている。これが実に面白い。彼は幼いころから虫を愛し、図書館で『ファーブル昆虫記』に出会い、昆虫学者を目指すが、現代ではとても厳しい道のりだ。しかし、彼は突き進む。いつかバッタに食べられる夢を見て。
(紹介者:芸術・文学資料担当 小林)
『名画を見る眼』(高階秀爾/著 岩波書店 1986)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:723/タ>
西洋美術研究の大家が読み解く、15人の画家と15点の絵画。西洋美術理解のために避けては通れない、それぞれの絵画の裏にある歴史的背景や約束事の数々を、著者は鮮やかな語り口で解き明かしていく。1枚の絵画にこめられた意味、西欧の精神とは― 。 西洋美術に興味がある人、ただ絵をみるだけでなく少し学術的に「入門」したい人に最適な、「西洋美術の教科書」。この本を読まずして、美術好きを語るなかれ。
(紹介者 吉田 奈緒子)
『狐のだんぶくろ わたしの少年時代』(澁澤龍彦/著 潮出版社 1983)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:914.6/シ>

澁澤龍彦は、大河ドラマで話題の渋沢栄一の縁戚にあたり、翻訳家、博覧強記の評論家、小説家として活躍した。本書は主に昭和初期、著者少年時代の回想録である。当時の都内滝野川周辺の風景や生活の様子が淡々と描かれ、肩肘張らずに読み通すことができる。また、「最初の記憶」には、4歳まで過ごした川越の様子も記されている。さて、タイトルの「狐のだんぶくろ」とは何か。興味のある方は一読をお勧めする。
(紹介者 蓮見 博)