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2023年7月2日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―

こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。

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さて、今月は...

■No.1■

『音楽の名言名句事典

(朝川博、水島昭男編著 東京堂出版 2012)

<所蔵館:久喜図書館 請求記号:762.8/オン>

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「事典」とあるが、通読すると音楽の歩みが理解しやすくなるように意図されてもいる。もちろん巻末の「人名索引」から気になるあの人の言葉だけ拾って読んでもよいし、作曲家、芸術家・思想家、演奏家、音楽の森で分けられている章ごとに読んでも楽しめる。

ブラームスがドヴォルザークの才能を認めた一言や、指揮者カール・ベームが楽員の誰かがトチッた時の自分の行動の変化について語った一言。モーツァルトのばく大な借金を彼の死後返済したのは悪女と言われていた妻だったこと、世界初のレコードに録音された歌は「メリーちゃんと子羊」だったことなど興味は尽きない。

編著者の二人は、音楽之友社で雑誌などの編集に長年携わっていた。島崎藤村の「椰子の実」に関する解説は次のような言葉で結ばれている。「やがて「名も知らぬ遠き島」へ「椰子の実」ならぬ兵士が多数送られることになる。」選ばれた言葉やその解説から編著者の想いも感じ取れる一冊である。

(紹介者:関 信子)

■No.2■

『舞台と客席の近接学 ライブを支配する距離の法則』

(野村亮太著 dZERO 2021.2)

<所蔵館:久喜図書館 請求記号:771/フタ>

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ここ数年ほど、人と人との距離がクローズアップされたことは歴史上珍しいのではないか。小劇場での観劇が好きだが、とりわけ劇場のような場所では、ここ数年主催者側が客席と舞台の距離、客席同士の距離などにかつてないほどの細心の注意を払う日々が続いていたと感じていた。それゆえ、タイトルに惹かれて手に取った一冊である。

本書は、なぜ舞台と客席は距離があるのか、なぜ客席同士は密接しているのかといった、劇場という場において半ば当たり前のことを検証し、それらがもたらすものについて、「劇場認知科学」なる学問を標榜し、その立場から実証実験に基づいて論じている。例えば、同じエンターテインメントを楽しむために会場に足を運ぶ人たちが、無意識のうちにどのような共同作業を行い、どのような感情を共有するのかといった点について解明している。読んでいる途中に感じた疑問が、読み進めるとともに解決していくという構成が心憎い。

劇場という空間の分析が、生で見る楽しさの意味を明確にする一方で、劇場に来なくてもあたかも劇場にいるかのような感覚を得ることは可能であるとする、未来のエンタメの形をも提示する1冊。

(紹介者:T.A)

■No.3■

『ザリガニ にほん・アメリカ・ウチダ(岩波科学ライブラリー162)』

(川井唯史著 岩波書店 2009.9)

<所蔵館:久喜図書館 請求記号:485.3/サリ>

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子どものころ、田んぼや用水路でよく釣ったザリガニ。実は日本にいるザリガニは3種類しかおらず、唯一の在来種であるニホンザリガニは北海道と東北の一部に分布するのみとなっている。では普段見かけるザリガニはいったいいつから日本にいるのか。

本書では、日本人とザリガニの歴史を辿るとともに、種類ごとの生態やその生活史に触れる。「万病に効く薬」として貴重だった江戸時代、大正天皇即位の晩餐会に「宮廷スープ」として提供されるなど、知らなかったザリガニの一面が見えてくる。

なお、6月1日よりアメリカザリガニは条件付特定外来生物に指定されたため、釣る・飼うは問題ないが、それを野外に放流したり、逃がしたりすることは法律で禁止となった。寿命を迎えるまで飼育することが難しい方、責任をもって飼うことのできる譲渡先が探せない方は、ザリガニはもう釣らないことをお勧めする。

(紹介者:F.T)


それでは、次回もお楽しみに。