図書館ブログ
2023年5月19日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情』
(佐藤直樹,フェリックス・クレマー/編 日本経済新聞社 2008)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:D/723.3895/ウイ>

寡黙で誠実、会えば安心できる懐かしい友人。ハマスホイの絵画は、一言でいえばそんな印象だ。
19世紀末から20世紀にかけ、画家たちはパリに集い、前衛絵画が咲き乱れる。一方、ハマスホイは北のコペンハーゲンの地にあって、恐らくは何の変哲もない旧市街の自室を執拗に描き続けた。少しくすんだ色調の静謐な作品を見ていると、彼の画家仲間の、どこかきらびやかで饒舌な作品と一線を画していることがよくわかる。
本書は、2008年に国立西洋美術館で開催された、ヴィルヘルム・ハンマースホイ(ハマスホイ)の展覧会図録である。佐藤とクレマーの共同企画により、ロンドンに続き日本初となる展覧会が実現した。この後2020年に開催される「ハマスホイとデンマーク絵画」展は、本書解説者の一人、萬屋健司が企画することになる。
当館では、こうした入手しにくい展覧会図録を数多く所蔵している。
風薫る季節に、是非あなたの一冊を見つけていただきたい。
(紹介者:蓮見 博)
■No.2■
『 世界に広がる俳句(角川学芸ブックス)』(内田園生/著 角川学芸出版 2005)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:911.304/ウチ026>
最近、若者を中心にSNSを利用した短歌や俳句がブームになっているらしい。本書は俳句を愛する元外交官がその海外経験を基に俳句の国際化について熱く語った本である。
幕末・明治期の当初、俳句(俳諧)は外国人に文学(詩)と認められていなかった。その後、1905年に外国人による世界最初のハイカイ集が出版され、以来今や愛好家は五大州に及び、十数ヶ国でハイク協会が設立されて相互の交流を深めている。
ハイクでは言語の壁を乗り越え、その国・地域の持つ気候・風土、歴史、文化が見事に表現されており、俳句の精神は各国に受け継がれている。著者は、ハイクの拡がりは単なる日本文化の輸出にとどまらず、世界の文化をより豊かにするものだ、と述べる。
近年、多くの外国人が日本を訪れるようになった。全国各地の風光明媚な自然や神社仏閣などの伝統文化に触れ、もしかしたら俳句もひとひねりしているかもしれない。
(紹介者:立花 浩美)
■No.3■
『誕生日の子どもたち』(トルーマン・カポーティ/著 村上春樹/訳 文藝春秋 2002)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:933.7/カホ702>
カポーティの短編作品が好きだ。この本には、私が一番好きな『クリスマスの思い出』を含む6編の作品が収められている。
『クリスマスの思い出』は、7歳の「僕」とその親友である60代のいとこのクリスマスにまつわる物語だ。二人は貯めてきた小銭を使って材料を揃え、「大切な友人」(ほぼ見知らぬ人やなんと大統領も含まれる)に贈るための30個にも及ぶフルーツケーキを焼く。物語の中でも特に好きなのが、材料に欠かせないウィスキーを密売者にもらいにいくくだりと、大人たちに怒られて泣く親友の老女を「僕」が慰めるシーンだ。「私が泣くのは大人になりすぎたからだよ(中略)年とって変てこだからだよ」「変てこなもんか。面白いだけだよ。(後略)」牧歌的なストーリーとは裏腹に、彼らの置かれる境遇の切なさがもの悲しく、だからこそ心に響く。幸せで温かい、でも一方でとても切ない。
無垢と美しさと悲しさと残酷さと・・・カポーティの魅力が存分に詰まった作品集である。
(紹介者:吉田 奈緒子)
それでは、次回もお楽しみに。
2023年5月18日
令和5年度子ども読書の日記念イベント―おおきなおはなし会―
こんにちは。久喜図書館の子ども読書推進担当です。
新緑がまぶしい季節になりましたね。
埼玉県立久喜図書館では、4月22日(土)に、「おおきなおはなし会」を開催しました。
「子ども読書の日」を記念して行われる、1年に1度の特別なイベントです。
今年は新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いてきたこともあり、場所を外から4年ぶりに1階の視聴覚ホールで、70名まで定員を増やして開催されました。今回のおおきなおはなし会は、午前「おはなしのじかん」と午後「にんぎょうげきのじかん」の2部構成。
午後の人形劇は事前予約が満員御礼のなか当日を迎えました。
まずは、ボランティアグループトムの会による、「おはなしのじかん」です。
紙芝居の『ぱんぽこぱん』から始まり、大型絵本『サンドイッチサンドイッチ』にバトンタッチ。ハンカチ遊び「サンドイッチ」が始まると、貸出したハンカチや手持ちのタオルなどを使って、子どもたちも楽しそうに一緒に参加していました。
続いてすばなしの「鳥呑爺(とりのみじい)」と「ひなどりとネコ」。それぞれ美しい歌と、はらはらする展開に大人まで引き込まれている様子でした。
さらに大型絵本の読み聞かせもあり、盛りだくさんなプログラムでした。
さて、お次は「にんぎょうげきのじかん」。夢まあるく舎さんの登場です。
二人だけでやっているとは思えない人形の動きに子どもたちは大喜び。
ペープサートの「きつねとたぬきのばけくらべ」、オリジナル作品の人形劇「ぷるるん ぷるるん ぱ」と「ウィッキーちゃんとでかん へ・へびだー巻」の3つの楽しいプログラムに、始終笑いの絶えない時間となりました。
アンケートでも楽しかった、また見たいとのご意見も多く、4年ぶりに視聴覚ホールで開催出来て本当によかったです。
トムの会さん、夢まあるく舎さんのおかげで、楽しい時間を過ごしてもらうことができました。
トムの会さん、夢まあるく舎さん、そして参加してくださった皆様、ありがとうございました!
2023年4月25日
書架ずらしを頑張っています!
こんにちは、地域・行政資料担当です。
私事ですが、先日、部屋の模様替えをしました。
収納が限界間近だったので、不要になったものを捨てたり、家具の配置を変えたりして、
物を置けるスペースを増やしました。
なかなかの重労働でしたが、空間にゆとりがある素晴らしさを実感することができました。
ところで、図書館でもこれと似たようなことをしているのをご存知ですか?
図書館の蔵書は年々増えます。
そのため、当館の書庫も徐々にゆとりがなくなってきています。
家であれば不要なものを省くということもできますが、県立図書館の場合は資料を捨てるということはほとんどありません。
少しでも収蔵スペースを増やしつつ、今後の増加に備えるために、書庫の棚や資料の配置を調整しています。
今回はその様子をご紹介したいと思います。
書架ずらし
こちらは埼玉資料が置いてある書庫の一角です。
▲並べて置ききれなかった資料が、何点か横置きになっています。
▲一番端の棚を見ると、棚板をもう少し高い位置できそうな余裕があります。
2段目以降も少しずつ上にずらせば、5段から6段に増やせそうです。
▲一旦、1段分の資料をブックトラックに別置して棚板を上にずらします。
これを繰り返していくと
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スペースが空き、1段増設できました!
これでゆとりができて資料を取り出しやすくなりますし、横置きも解消できます。
地道な作業なうえ、もっと余裕を持たせたい箇所を挙げだすと際限がありません。
けれども、この1段のおかげで少しでも多くの資料が置けるようになったと思うと、やりがいがあります。
ちょっとした運動にもなるので一石二鳥ですね!
皆さまには直接ご覧いただけない書庫での作業ですが、
図書館のなかにはこういった仕事もあると知っていただけると励みになります♪
2023年3月30日
知っていますか? 少しマニアックな図書館資料(熊谷図書館)
突然ですが、あなたは何を目当てに図書館に行きますか?
本や雑誌を借りるためでしょうか。それとも新聞を見るためでしょうか。
CDやDVDを借りる人もいると思います。
でも、図書館で所蔵している資料はそれだけではありません!
今回は、知られていない少しマニアックな図書館の所蔵資料をご紹介いたします。
- レコード・カセットテープ・ビデオディスク(レーザーディスク)
人によっては懐かしいと思えるようなものかもしれません。
埼玉県立図書館では、今はあまり使われなくなった規格の視聴覚資料も書庫で大切に保管しています。
ビデオディスクは図書館内での視聴のみ利用となりますが、レコードとカセットテープについては貸出を行っています。
もちろん視聴覚ブースで視聴することも可能です。
- 紙芝居舞台・拍子木
紙芝居を借りたことがある人はいるかもしれませんが、紙芝居の舞台や拍子木(打ち合わせて鳴らす木の棒)も借りられることはご存知でしたか?
実は借りられるんです。
本格的な紙芝居をしてみたいという方はカウンター職員にお声掛けください。
- 埼玉県に関するカルタ・ボードゲーム
埼玉県立図書館では、郷土に関する資料について網羅的な収集に努めています。
郷土に関する内容であればカルタも所蔵しています。
最近では、埼玉県をテーマにしたボードゲーム「みんなのさいたマップ」(Würfel 2021)も図書館資料として所蔵しています。
- 「埼玉西武ライオンズ選手カード」(埼玉西武ライオンズ 2008)
年史やファンブック、雑誌の特集号など、埼玉西武ライオンズに関する資料も郷土に関する資料として収集していますが、この選手カードはその中でも特に変わった所蔵品です。
残念ながら選手カードは2008年のものだけで、それ以外の年のカードはありません。
- 「即位礼正殿の儀」(内閣府 2019)
令和元年10月22日に挙行された即位礼正殿の儀の参列者へ配布された記念品です。
式次第や高御座、御帳台の写真などが入っています。
一般には流通しない貴重な品です。
いかがでしたか。
ほかにも埼玉県立図書館では古い資料や郷土に関する資料、非売品で一般流通されない資料など、貴重な資料を多数所蔵しています。
今回ご紹介した資料の多くは書庫で保管されており、また貸出ができない資料です。
ご覧になりたい方はカウンターの職員に聞いて、図書館内で閲覧してください。
2023年3月29日
歌わない。踊らない。なのに激しいインド映画3選
こんにちは、視聴覚資料担当です。
熊谷駅から歩いて20分ほどかかる県立熊谷図書館。まわりにお店が少なく不便なこともありますが、なぜかカレー屋だけは充実しています。
▲4つのカレー屋の線でつないだ中心に県立図書館があります
蔵書点検日の昼食にはみんなでカレーを食べるという習慣も、いつの間にか根づいており、その日ばかりはスパイシーの香りが漂ってくる中、職員一同モクモクと作業に励んでおります。
さて、カレーといえばインド。インドと言えばインド映画!
というわけで、最近、巷で話題のインド映画『RRR』。
皆さんはすでにご覧になられたでしょうか?
職員の間でもときどき話題に上がることがありますが、わたしはその度に見逃した勢として悔しい思いをかみしめています "o(><)o" くぅぅ~
最近勢いのあるインド映画ですが、その特徴と言えば何が思い浮かびますか?
「突如始まるパワフルな歌!」
「物語を遮るように突如始まるやたら気合の入ったダンスシーン!!」
▲一般的なインド映画のイメージ
確かにそれらもインド映画の重要なシーンです。
しかし、踊ってばかりいるのがインド映画ではありません。
そこで今回は県立図書館が所蔵しているインド映画を3作品ほどピックアップしてみました。上記のイメージとは異なる静かな映画の世界を紹介したいと思います。
(1)『大地のうた』(アプー三部作)
監督:サタジット・レイ
出演:シュビル・パナージ,カヌ・パナージ,コルナ・パナージほか
ベンガル語版 1998年 125分
ビデオディスク(館内視聴のみ可)
まず最初は、インドを代表する名監督サタジット・レイの『大地のうた』
本作はベンガル地方に住むアプー少年とその家族を描いた監督自身の半自伝的な作品であり、レイ監督にとってのデビュー作にあたります。
監督の自己資金により製作が始まったため、完成までに3年以上を費やしたとか、俳優だけでなく、映画スタッフもほとんどが未経験者であったという逸話もある本作。
しかし、だからこそ当時のインド社会を克明に描き出していると評され、国内のみならず海外からも高い評価を受けました。
作中ではゆったりと流れる時間と熱帯独特の風景描写が際立っており、本作に独特の雰囲気をまとわらせています。
県立熊谷図書館では青年となったアプーが描かれる「大河のうた」、家族を持ち父親となる「大樹のうた」と三部作すべての所蔵があります。
後の『女神』や『チャルラータ』へと連なる、レイの輝かしいキャリアの出発点となった本作。ぜひご覧ください。
(2)『ガンジー』
監督:リチャード・アッテンボロー
出演:ベン・キングズレー,キャンディス・バーゲン,エドワード・フォックス
1988年 188分
ビデオディスク(館内視聴のみ可)
次に紹介するのは映画俳優としても知られるリチャード・アッテンボロー監督が、インド独立の指導者マハトマ・ガンジーの波乱に満ちた生涯を描いたヒューマンドラマの大作、『ガンジー』です。
植民地出身のエリート層であったガンジーがいかに独立運動へと身を投じたのか。
青年期から晩年に至るまでを丁寧に描いた本作は、第55回アカデミー賞で作品賞など8部門に輝き、映画史に燦然と残る名作として知られています。
なかでも俳優ベン・キングズレーは、ガンジーの外見から仕草までを見事に再現したとして、大きな注目を集めました。
その生涯に5回もノーベル平和賞候補となったガンジー。
「非暴力・非服従」を掲げたその運動は、死後も世界中から敬慕され続けています。
暴力に揺れる今の時代だからこそ、彼の思想に触れるべきなのではないでしょうか。
(3)『マハーバーラタ』
演出:ピーター・ブルック
脚本:ジャン・クロード・カリエール
出演:タッパ・スダナ,ヨシ・オイダ
1989年 305分
ビデオディスク(館内視聴のみ可)
最後に紹介するのは、演出家のピーター・ブルックがインドの叙事詩を舞台化した『マハーバーラタ』です。
原本である「マハーバーラタ」は、約3000年前に成立したとされるインドを代表する一大叙事詩です。
古代インドの二つの王家の間で繰り広げられた壮絶な闘いを中心に、人間にとっての善悪など哲学的な主題を内包した古典として知られています。
1985年にアヴィニョン演劇祭で初演された本作は、9時間にも及ぶ上演時間にも関わらず多くの演劇人から称賛の声をもって迎えられました。
ブルックのキャリアにおいても重要な位置を占める本作ですが、クレジットには日本人スタッフの名まえを見ることもでき、俳優として笈田ヨシ氏が、また音楽監督として土取利行氏が参加しています。
他に類を見ないほど壮大な叙事詩を舞台劇として映画化した本作。
インドを舞台とした壮大なスペクタクルをぜひご覧ください。
いかがでしたでしょうか?
歌も踊りもないインド映画たち。しかしその根底に流れる、生きることへの強い活力と希望は現在のボリウッド映画にも通底しているのかもしれません。
とはいいつつも、そのうち『RRR』も図書館資料に入らないかなーと思う視聴覚資料担当なのでありました @:-) アルビダー(さようなら)