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2025年2月5日
令和6年度文化講座「火への対抗と信仰の民俗」を開催しました!

こんにちは。熊谷図書館の人文・社会科学資料担当です。

2024年11月30日(土曜日)に、熊谷図書館で文化講座を開催しました。

R6文化講座ちらし.png

昨年度は、県立歴史と民俗の博物館共催講座ということで、「出張講座 あなたの街にも『れきみん埼玉』」を文化講座に代えて実施しました。

その時に、「もっと学芸員さんのお話を聞きたい」をいうお声をいただいており、今年の文化講座も学芸員さんをお招きできないか?と担当者は考えて、今回の講座を企画することになりました。

ところで、文化講座と同時期に行われていた資料展「火への畏怖と親しみ火消の歴史と火の民俗をたどるについて、みなさま、ご覧いただけたでしょうか。

実は今回、資料展のテーマが先行して固まりつつありました。そのため、ざっくりと「火」を文化講座のテーマにするという方向性が見えてきました。

当館では歴史・哲学分野の他に、社会科学・産業分野の資料も取り揃えています。この「火」について、図書館資料の分類でいうところの2類(歴史)の観点よりも、3類(社会科学)の観点、中でもとりわけ「民俗学」というアプローチを出来たらと思いました。そこで民俗学がご専門である、県立歴史と民俗の博物館の戸邉優美(とべ ゆみ)主任学芸員に講師をお願いしました。

講座は「第1部 火災に立ち向かう人びと」「第2部 火をめぐる信仰と祭り」の2部構成で、それぞれ埼玉県内の事例や、県立歴史と民俗の博物館の収蔵資料を交えてお話いただきました。簡単にではありますが、講座の内容を一部ご紹介したいと思います。

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「第1部 火災に立ち向かう人びと」

県立歴史と民俗の博物館の常設展第10室(民俗展示室)では、「火とくらし」をテーマとしています。その展示内容に関連して、江戸時代の頃は都市で火災が発生するとあっという間に燃え広がり、大きな被害につながること、火災の被害を防ぐための工夫にはどのようなものがあったのか、などのお話をいただきました。

蔵造りの建物は耐火性に優れ、県内では川越市の蔵造りの街並みや、行田市の足袋蔵が有名です。都市ではお店と居住空間を兼ね備えた店蔵というものが多くみられるということで、飯能市の指定有形文化財を例に、図面や写真もたくさん用いて解説をしていただきました!

それから、当館の資料展にも絡めて、火災が起きた時の消火に関するお話もお伺いしました。当時は延焼を防ぐために周りの建物を壊す破壊消火が行われました。火消用具には鳶口(とびぐち)や鋸(のこぎり)といった、消防士というより大工さんが使うような道具があったということです。現代のような水を使った消火のための用具もありましたが、水の補給が難しく放水距離も短いということで、当時の主力にはならなかったようです......。

第二部.jpeg

「第2部 火をめぐる信仰と祭り」

第2部は信仰や習俗、祭りや民俗行事についてのお話です。

人びとは火災を恐れて、台所の火を扱うところに火伏せの神を祀りました。火伏せの神は、同時に家の守り神や農作物の豊穣をもたらすものといった性格を持ち合わせていたそうです。

他にも、火には悪いものを祓う力や浄化の力があると信じられてきました。そのことから、村廻りを行って村の境界の外側へ災厄を追い払う行事である「虫追い」に火が用いられました。戸邉主任学芸員が調査に携わった、県内の様々な無形民俗文化財の事例を交えながらお話しいただきました。人びとは火を恐れながらも、大きな力・清めの力があるものだと捉えていたことが分かります。

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そして、後半では映像資料を上映しました。『埼玉県秩父郡小鹿野町橋詰のドウロク神焼き』という資料で、現在も小正月に行われている小鹿野町の民俗行事です。地域の方々が集まり、河原でドウロク神小屋を建てていきます。夕方になると、2体のドウロク神と称する自然石を小屋の中に納め点火します。天に届きそうなほど炎が高く燃え上がる様子は、映像とはいえ迫力があります!

この行事が地域の火難除けとなるとともに、ドウロク神焼きの火で煙草を吸ったり、その火で焦がした「ワキザシ」という疑似刀を玄関に飾ったりすることで、魔除け・疫病除けの意味も併せ持つのだそうです。

2部構成の講座に映像上映と、盛りだくさんの内容で時間があっという間に過ぎ去りました。

わずかではありますが質疑応答の時間も設けさせていただき、鋭い着眼点からの質問に丁寧にお答えいただきました。

講座終了後、まだ聞き足りないという熱心な参加者の方がいらっしゃって、講師とお話される姿も印象的でした。また、参加者のアンケートからは「興味深いお話を聞くことができて面白かった」「画像や映像があってわかりやすかった」などのあたたかいお言葉をいただきました。

講師の戸邉主任学芸員、そしてご参加くださいました皆様、ありがとうございました。

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関連資料展の資料リストはウェブサイトからも見ていただくことが可能です。資料展は終了しましたが、貸出できる資料もありますので、ぜひご覧ください。

来年度の文化講座もどうぞお楽しみに!