資料紹介
2026年7月31日
こんな本あります!ー久喜図書館の書棚からー
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『貝の文化誌』(ファビオ・モレゾーン/著,伊藤はるみ/訳 原書房 2023)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:484/スセ>

海の思い出に美しい貝殻を持ち帰った経験のある人は、きっと少なくないだろう。本書によると、人類最初の芸術作品は、約五十四万年前に作られたジグザグ線を刻んだイシガイの貝殻であるらしい。人類は先史時代から、その美味しさから食料として、あるいは美しさから貨幣や装身具として、貝の仲間を利用してきた。本書ではそんな人と貝の関わりの歴史を、カラー図版と共に概説する。また、生物の貝についても分かりやすく解説しており、人類より遥か昔から存在し続ける貝が、地球の新参者たる人類の活動によって大きな影響を受けていることも知ることができる。島国に住む日本人にとって身近な存在である貝に、改めて目を向けてみてはいかがだろうか。
(A・Y)
■No.2■
『歴史の中の植物 花と樹木のヨーロッパ史』(遠山 茂樹/著 八坂書房 2019)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:470.4/レキ>

ヨーロッパに咲く花や樹木は植生が違う日本とは種類が異なる。洋画や欧州の小説で植物が出てくるとその形や意味などをなんとなく想像で補完しながら読み進めてしまうことがある。この本では、最初にヨーロッパ原産の植物にまつわる神話や逸話を紹介している。また、神話が描かれることの多い西洋絵画にも触れ、モチーフとして描きこまれる植物がどのような意味を持つのかを知ることができる。
中盤から後半では、ヨーロッパに持ち込まれた植物や持ち込んだプラントハンターたちが紹介されている。世界中を駆け巡ったプラントハンターたちの旅の様子と、持ち込まれた植物がヨーロッパ内の様々な場所で栽培され、愛された様子がわかる。本書を通じて、当時のヨーロッパの人々の新しいものに対する情熱を感じて欲しい。
(T.O)
プラントハンターとは食料・香料等に利用される有用植物や、観賞用植物の新種を求め世界中を探索する人のこと。
■No.3■
『完璧な赤 「欲望の色」をめぐる帝国と密偵と大航海の物語』(エイミー・B.グリーンフィールド/著,佐藤桂/訳 早川書房 2006)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:753.8/カン>

なんとわくわくするタイトルだろう。彼らが求めた「完璧な赤」とは一体どのようなものなのか。
中世ヨーロッパでは、赤い布を纏うことは、富と権力の象徴であったという。当時の染色技術では、鮮やかな真紅を作り出すことは困難だったためである。そのような折、新大陸から衝撃とともに未知の「赤」がやってきた。
著者は赤色を求めて奔走する人々を、多くの資料に基づいて生き生きと描き出している。副題のとおり、本書には染色家以外にも多くの人間が登場する。皇帝、征服者(コンキスタドール)、海賊、化学者......これほどまでに多くの人々を駆り立てた赤は、まさしく「欲望の色」と呼ぶにふさわしい。ぜひ、本書でその正体を確かめていただきたい。
(R・M)
それでは、次回もお楽しみに。
2026年6月28日
こんな本あります!ー久喜図書館の書棚からー
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『恐竜の教科書』(ダレン・ナイシュ/著 ポール・バレット/著 小林快次/監訳 久保田克博/監訳 千葉謙太郎/監訳 田中康平/監訳 吉田三知世/訳 創元社 2019)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:457.87/キヨ>

「恐竜」と聞いて、みなさんが最初に思い浮かべる名前は何だろうか。 ティラノサウルス、ステゴサウルス、ブラキオサウルスなど挙げればキリがないはずだ。
本書は全6章で構成されており、恐竜の歴史や解剖学、生態と行動などを豊富な写真やイラストを交えて解説している。中でも興味深いのは、「鳥は恐竜そのものだということは、研究上重要な知見である」という記述である。鳥類に近縁な主竜類の化石が多数発見され、それらの化石には鳥類の祖先が持つと考えられていたあらゆる特徴がみられたという。このような鳥と恐竜の関わりについては、「第5章 鳥類の起源」で詳しく述べられている。
恐竜研究は日々進歩し、新たな発見が続いている。私たち人類が存在しなかった時代のことが、残された化石を研究することで明らかになってきている。本書を読んでこれまでの恐竜研究の歴史をたどり、恐竜たちの時代に思いを馳せてほしい。
(小柳 直士)
■No.2■
『最新の国際基準で見わける雲の図鑑』(岩槻秀明/著 日本文芸社 2021)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:451.61/サイ>

毎日、天気は刻々と変わり、時にはゲリラ豪雨や雷雨等、天気予報をチェックしていても急な悪天候に見舞われることがある。そこで、さまざまな雲を見て、天気を予測できたらどうだろうか。著者は「屋外活動をしていてすぐに気象情報をチェックできないようなときは、雲の表情の変化から危険をいち早く察知でき、身を守ることにつなげられる。」と述べている。
本書は様々な種類の雲の名前や写真をはじめ、解説から発生メカニズムについても知ることができる。 また、天気を予測する情報も掲載されている。空を見たときに、ぜひ手にしてほしい1冊。
(T.T)
■No.3■
『明治の地方ビール』(牛米努/著 吉川弘文館 2023)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:588.54/メイ>

今でこそ地域の特産を活かした小さな醸造所が作るクラフトビールがブームであるが、明治時代にも各地で小規模な醸造所でビールが作られていた。それは勧業政策と税制優遇措置に理由がある。全国府県の勧業課により、製造方法が全国各地に広まって、「地方のビール」として発展していった。後の税制改革により、地方の小規模醸造所は廃業を余儀なくされ、結局大手会社に集約されていったのであるが、本書ではその原因を増税だけではなく、輸出奨励のための原材料の変更にも見出している。
また、全国の地方ビールが都道府県ごとに紹介されていて、膨大な一次資料(歴史的な史料)から情報が丁寧に拾い集められている。埼玉県では、赤沼村(春日部市)の「マルコビール」と八子新田(吉川市)の「中村ビール」が紹介されているが、これ以外にも売り出しが報じられているだけのビールもあるようだ。史料がなく詳細はわからないが、まだまだ何か新しい史料がないか、図書館員として探してみたくなる。
(Y)
それでは、次回もお楽しみに。
2026年6月10日
こんな本あります!ー久喜図書館の書棚からー
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『少年時代』(ラビンドラナート・タゴール/著 めこん 2022)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:929.851/タコ501>

タゴールはアジア人で初めてノーベル文学賞を受賞した、インドとバングラデシュを代表する詩人である。この本は、彼が子供時代を振り返った追想記となっている。
約百年以上前のインド、その暮らしは何もかもが遠くに感じられるが、丁寧な注釈が頼りになる。特に料理名などの固有名詞の訳註から想像する味は、80歳になってから思い出す子供時代ということを差し引いても美味しそうに綴られている。ベンガル語からの完訳をしてもなお詩的な文章や、序文の後に掲げられている「序詩:少年」からタゴール作品の雰囲気もつかみ取れるだろう。
後半に付されている解説は、主にタゴール家の歴史についてまとめられており、先にこちらを読んでタゴールが育った環境を念頭に置いておくのもいいだろう。というのも、私が最初から読んでみたところカタカナばかりの慣れない人名に首を傾げ、早々に解説を読み出したからだ。特に、兄弟がたくさんいるタゴールは、この追想記も家族の話が大半を占めているので予習にもなる。読書は何も一ページ目から一文字一文字丁寧に読むばかりではない、ということを思い出させてくれる一冊でもある。
(M.O)
■No.2■
『虫と日本人 幕末~昭和戦前期の昆虫文化史』(保科英人/著 三弥井書店 2025)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:486.04/ムシ>

昔の日本人が虫とどのように付き合っていたかを解き明かす一冊である。町で売られる虫の価格は地方によってどうだったのか、戦前の蛍狩りはどのような様子であったのかなどを数多くの資料、特に地方新聞の記事から記述している。
戦前までの蛍狩りは蛍を捕まえて持って帰る文字通りの「蛍狩り」であったという。大衆にとっての一大娯楽でもあったため、蛍狩りがイベントとして実施された。事前に集められた何千何万もの蛍が会場に放たれ、それを捕えようと駆け回る参加者。あまりの熱狂ぶりに怪我人が出る、施設が破壊される、早々に蛍が捕り尽くされてしまい、後から来た客から蛍がいないとクレームが入るなど、現代における蛍狩りの優美なイメージとはかけ離れた騒動の数々が記されている。
このような昔の日本人と虫とのエピソードについては、筆者が戦前の地方新聞から見つけているのだが、このために全国の図書館や研究機関を訪問して、地方新聞を読み続けたそうだ。
ほかにも、いにしえのやんごとなき方々は、虫とどのように触れ合ったのか、戦前の満州や朝鮮に住む日本人に海を越えて届けられた虫たち、カブトムシとクワガタムシはいつから子供たちの憧れだったのか、など昔の日本人の虫に対する思いが伝わるエピソードが満載である。
(K.M)
■No.3■
『ハンチバック』(市川沙央/著 文芸春秋 2023)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:913.6/イチ038>

「本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の身体は生きるために壊れてきた。」
読書は何時でも我々の障壁となり、その自由を、生命を破壊する。健常性を有している者たちはその特権に気が付かず、バリアを大量に生産し続ける。特権に気が付いた誰かが配慮とか多様性などと言い、私たちを自分たちとは違う特別な人にする。
読書を愛しているからこそ、その媒体を憎む主人公、釈華の声から、どうか目を逸さず読了いただきたい。
(S.O)
それでは、次回もお楽しみに。
2026年3月31日
こんな本あります!ー久喜図書館の書棚からー
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『ラテンアメリカ怪談集』(鼓直/編 河出書房新社 1990)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:B963/ツ>

「家中に太陽の力がまんべんなく行き渡っている。昼食の時刻であることを知っている腹をすかせた太陽。」(収録作品「リダ・サルの鏡」より)
強烈な太陽光が降り注ぐラテンアメリカに怪談という文学ジャンルは存在するのか?
この問いに答えるべく、幻想文学の一角にわずかに存在する、ラテンアメリカの怪談的な作品を集めたのが本書である。収録された15作のうち、アルゼンチンの作品が過半数を占める。
日本の怪談が風習や信仰と結びくように、本書に収録された作品はラテンアメリカの文化や死生観を物語る。そして、怪談の描写に迫力を与えるのが、ラテンアメリカの象徴でもあるダイナミックで多様な自然環境である。雄大な自然は人々に安らぎを与えることもあれば、時に苛烈な自然現象によって恐怖と絶望をもたらす。個性溢れる刺激的な怪談が結集した一冊。
(M.M)
■No.2■
『フレスコ画のルネサンス 壁画に読むフィレンツェの美』(宮下孝晴/著 日本放送出版協会 2001)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:723.37/フレ>

「石の文化」であるヨーロッパの建造物は、広大な壁面を有しており、壁画の装飾には各時代で大きな関心が払われてきたという。
フレスコ画は、そうした建築物の壁面を彩るために発展したひとつの技法である。水だけで溶いた顔料が濡れた漆喰にしみこんで、漆喰が乾いて硬化する時に、その結晶の中に顔料が閉じ込められるという。
この本では、イタリアに多数残る数々のフレスコ画を紹介するとともに、技法や画家、フレスコ画の化学、時には絵のモチーフになったエピソードまでが解説されている。
フレスコ画は、700年以上の時を経ても、描かれた時と同じく、今なおそこにある。この本を読んで、作品の美しさや画家の手仕事に驚嘆すると共に、その果てしない時の流れに思いを馳せてほしい。
(自然科学・技術資料担当 吉田奈緒子)
■No.3■
『日本刀の教科書』(渡邉妙子/共著,住麻紀/共著 東京堂出版 2025)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:756.6/ニホ>

日本史において、日本刀の存在は欠かせない。権力者の隣には刀があり、今も漫画やゲームの中で様々な日本刀が活躍している。
そんな日本刀は時代によって好まれた形や長さがあった。南北朝時代などの戦いが激しい時代には刀が大型化したり、その大きな刀が後の時代には短く加工されることもあった。この本では刀の形の歴史や歴史上の人物に関わりの深い刀を紹介している。
また、この本を読んで刀を見たい、もっと勉強してみたいと思った時に行くべき場所も紹介されている。日本刀を見られる場所の一つとして埼玉県立歴史と民俗の博物館も紹介されている。この本を読んでから行けば、日本刀鑑賞を今よりももっと楽しめるはずだ。
(T.O)
それでは、次回もお楽しみに。
2026年1月24日
こんな本あります!ー久喜図書館の書棚からー
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『ペンギン、日本人と出会う』(川端裕人/著 文藝春秋 2001)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:488.66/ヘン>

ペンギンといえば、日本の多くの動物園・水族館で見ることができ、比較的ポピュラーで身近な存在であろう。世界的にみても、その飼育頭数は群を抜いている。一方で日本の動物園等で最も多く飼われているフンボルトペンギンが実は絶滅危惧種であり、世界の野生個体総数の約1割にあたる約1200羽が日本国内で飼育されていることは、あまり知られていない。また年に1度、飼育員や研究者等のスペシャリストが集まる「ペンギン会議」も開催されるなど、ペンギンに関わる人々も多い。
日本はいかにしてペンギン大国となったのか。そこに、戦後再開した捕鯨事業が深く関わっていたとは驚きである。捕鯨船がお土産として持ち帰ったエンペラーペンギンをはじめとする極地ペンギンを、少しでも長く飼育するために奮闘する人々の努力の積み重ねは、やがて繁殖の成功へと繋がっていく。
ペンギンと日本人との出会いと歩みについて、動物園や水族館、捕鯨船、南極探検隊と研究者等、それぞれの立場からわかりやすく追うことができる一冊である。
(紹介者:A・S)
■No.2■
『なぜ人間は泳ぐのか?』(リン・シェール/著 高月園子/訳 太田出版 2013)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:785.2/ナセ>

泳ぐことについてあなたが最後に考えたのはいつだろうか。おそらく、昨日、1週間前、小学校の水泳の授業のときなど、様々な答えが返ってくるのではないか。
本書は、放送ジャーナリスト・作家で熱心なスイマーでもある著者が、水泳の歴史や文化、トピックなどを綴ったものである。また、トルコにあるダーダネルス海峡の横断泳(長距離水泳レース)に挑戦する様子が合間に挟み込まれており、読者は臨場感を存分に味わうことができるだろう。
人類と泳ぐことの関係や四泳法の誕生、オリンピック選手や水泳映画まで、扱われている内容は幅広い。横断泳については、長い距離を泳ぐためのフォームの見直しや合宿で練習する様子から始まり、横断泳中の心境も語られている。本書に登場する人々の言葉からは、自分にとって泳ぐとはどういうことか、泳ぐことをいかに愛しているかが伝わってくる。
著者とともに最後のページまで泳ぎきったとき、水の上に体を浮かべる気持ちよさを味わいたくなるだろう。
(紹介者:小柳 直士)
■No.3■
『天皇の美術史1 古代国家と仏教美術』(増記隆介[ほか]/著 吉川弘文館 2018)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:702.1/テン>

日本の文化・芸術を考える時、天皇の関わりは大きい。現存する美術作品には、天皇の意向が反映されたものも多く、各時代の社会情勢や美に対する感性等、様々な視点で読み解くことができる。本シリーズは、「天皇が直接的に関与した」という視点で美術作品を選定し、その通史がまとめられている。
第一巻目となる本書は、古代国家と仏教美術をテーマに、古典の成立に焦点を当てている。高松塚古墳壁画や秘仏等、誰もが一度は耳にしたことのある作品が多く取り上げられている。
これらの作品に天皇がどのように関与し、どのような影響を与えたのだろうか。ありそうでなかった一冊。
(紹介者:S・O)
それでは、次回もお楽しみに。
