資料紹介
2024年2月27日
雑誌の付録いろいろ
こんにちは。久喜図書館の新聞・雑誌担当です。
日々雑誌の受入をしていると、雑誌の付録にもいろいろあるなと感じます。
埼玉県立図書館で受入を行う雑誌は原則永年保存とし、その付録もなるべく廃棄せずに保存しています。
今回はそんな付録にどんなものがあるか、写真とともにご紹介します。
雑誌に貼り付ける付録
雑誌の受入を行う際は、原則として雑誌本体に付録を貼り付けることとなっています。
こうすることで貸出を行う際に、雑誌とともに付録の内容も確認することができます。
『碁ワールド』は付録がついていることが多い月刊誌で、末尾に冊子を付しています。
『碁ワールド』の所蔵確認・予約はこちらから↓
https://www.lib.pref.saitama.jp/winj/opac/switch-detail-iccap.do?bibid=1200000614
雑誌に貼り付けることができない付録
原則通り、付録を雑誌に貼り付けられない場合があります。
その場合は書庫に保管をしています。
雑誌本体には付録を書庫に別置する旨をシールで表示しています。
別置した付録は貸出できませんが、館内でご覧になることはできます。
写真の『ゴルフトゥデイ』2022年11月号の所蔵情報・予約はこちら↓
https://www.lib.pref.saitama.jp/winj/opac/switch-detail-iccap.do?bibid=2298057060
例えば『サイクルスポーツ』2023年5月号には、自転車のメンテナンスブラシが付いており、書庫に別置しています。
写真の『サイクルスポーツ』2023年5月号の所蔵情報・予約はこちら↓
https://www.lib.pref.saitama.jp/winj/opac/switch-detail-iccap.do?bibid=2298063879
『サイクルスポーツ』の付録は本体に付けられないことが多く、書庫には歴年の付録が蓄積されています。
先日は公式SNSでもその様子を発信しましたので、まだ見ていないという方はこちらからご覧ください。
(https://twitter.com/saitamaken_lib/status/1756940413712396444)
おわりに
雑誌の付録についていくつか事例を紹介しましたが、いかがだったでしょうか。雑誌によっていろいろな付録があることを改めて認識できたのではないでしょうか。
埼玉県立図書館で受入を行う雑誌は、受入ルートに書店等からの購入、団体や個人からの寄贈、県内市町村立図書館等からの移管という3つのルートがあります。購入雑誌はもちろんのこと、寄贈、移管雑誌についてもなるべく付録がある状態で保存できるように収集しています。
雑誌は発行された時代の世相を表す資料として非常に貴重です。例えば、少し前の時代の雑誌にはフロッピーディスクがついていることもありましたが、今ではフロッピーディスクを読み取る機械を持っている人は少ないかと思います。
『I/O = アイオー』の所蔵確認・予約はこちらから↓
https://www.lib.pref.saitama.jp/winj/opac/switch-detail-iccap.do?bibid=1200000643
雑誌本体の装丁や記事はもちろんのこと、付録にも着目して資料利用をしてみてはいかがでしょうか。今は当たり前のものも、20年30年と時が経過して確認してみると、「あの時こんなものもあったな」と思えるようになると思います。発行から2年以内の雑誌及びその雑誌本体に付された付録以外は、資料保存のため館内利用に限っております。貸出ができない資料も職員にお声がけいただき、ご覧いただければと思います。
2024年2月6日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『お菓子の日本語文化史』
(前田富祺著 和泉書院 2023)
<所蔵館:久喜図書館 814/オカ >
私達の生活を楽しく彩ってくれるお菓子。そのお菓子を言葉の面から深堀したのがこの本である。お菓子は五十音順の項目で配列されているので、気になる項目をつまみ食いするのもよし、完食して蘊蓄を深めるのもよし。
文中に引用されている文学作品名が巻末にまとめられているので、お菓子が登場する文学作品を食してみるのも楽しいかもしれない。
表紙や口絵のイメージに比べて中身は濃厚なので、早食いせずにゆっくりと味わいたい。
(紹介者:M.O)
■No.2■
『必勝法の数学』
(徳田雄洋著 岩波書店 2017)
<所蔵館:久喜図書館 417.2/ヒツ>
ゲームに必ず勝てる方法はあるのだろうか? この本は、必勝法の研究に没頭した20世紀の科学者たちが明らかにした原理を紹介するものである。
主に扱うのは2人で対戦するタイプのゲームで、山くずしやオセロ、サッカーのPKなど、さまざまなものを数学的に解説している。読めばゲームで負けなしになれるかもしれない。
本書によると、子どもが2人のチェスチャンピオンと同時に対戦して、片方には負けない方法があるそうだ。どんな理論か気になった方は、ぜひ手に取って確かめてみてほしい。
(紹介者:T.K)
■No.3■
『百』
(色川武大著 新潮社 1982)
<所蔵館:久喜図書館 イ>
色川武大(1929-)には、阿佐田哲也名義で『麻雀放浪記』などの作品もあるが、『百』は色川武大名義の作品である。
弟の事故から始まる「連笑」、父が母を突き飛ばしたという話から始まる「百」、退役軍人だった父の老いを描いた「ぼくの猿 ぼくの猫」、「耄碌した」父を病院に入れるかどうかという「私」の葛藤が描かれる「永日」が収録されている。
表題作「百」では、老いた父親が見る幻や幻聴が、作品の終わりに置かれている。紙おむつの話など現実的な描写が続いていたはずなのに、読後には、不思議と幻想的な余韻が残る。静かで、短くて、美しい小説だと思う。
(紹介者:Y.M)
それでは、次回もお楽しみに。
2023年12月26日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『ムシの考古学』
(森 勇一/著 雄山閣 2007)
<所蔵館:久喜図書館 457.8/ムシ >
遺跡から出土するのは石器や土器ばかりでない。本著では、日本各地の遺跡で発見された昆虫化石の種を特定し、その昆虫の生態から、当時の社会や生活環境を復元する。
例えば、鎌倉時代の遺跡からいくつも発見された謎のかたまり。これは土と大量の畑作害虫で構成されており、当時の人々が畑に大発生した虫を採って集めて穴に埋めて処分したのである。
昆虫化石からは、文献史料などでは分からない、当時の人々のリアルな暮らしを窺い知ることができる。
(紹介者:C・K)
■No.2■
『世界を変えた6つの「気晴らし」の物語 』
(スティーブン・ジョンソン/著 朝日新聞出版 2017)
<所蔵館:久喜図書館 502/セカ>
動物は生存のための技術向上に力を入れるが、人間はなぜかそれ以外の技術や事柄に力を入れることがある。
この本では生存には必要のないはずの人間の気晴らしが技術や産業へ与えた影響を紹介する。
例えば人間は古代より音楽を楽しむための技術を熱心に磨いた。この熱意は最初のコンピュータが作成される千年も前にはプログラミング可能な水力オルガンを作成する。また中世の女性達の服のへの気持ちが百貨店という新しい買い物スタイルを生み出していく様子を紹介する。
(紹介者: T・O)
■No.3■
『食べる西洋美術史「最後の晩餐」から読む』
(宮下規久朗/著光文社 2007)
<所蔵館:久喜図書館 702.3/タヘ>
宗教画というと近寄り難さを感じるかもしれないが、食事風景といえば印象はがらりと変わる。
著者は、ルネサンス期から近代までの西洋美術を「食」という視点から見つめ直していく。食に傾ける情熱では引けを取らないはずの日本や中国では、なぜ近代になるまで食事風景が描かれなかったのか。粗食を善としながら晩餐の光景を繰り返し描くのはなぜなのか。
西洋美術史のみならず、キリスト教文化の入門にもおすすめしたい一冊である。
(紹介者:R・M)
それでは、次回もお楽しみに。
2023年11月7日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『極楽征夷大将軍』
(垣根涼介著 文藝春秋 2023)
<所蔵館:久喜図書館 913.6/カキ005 >
太平記とは異なる新たな足利尊氏を提示した、長大な歴史小説。逆に、後醍醐天皇・楠木正成・新田義貞等の誰もが知っている英雄を従来通りに描いているため、新解釈に説得力を持たせ安心感を与えている。実は戦べたな高師直と弟の足利直義の活躍と苦悩を軸に、室町幕府ができるまでを資料に基づき実に実に丹念に描いている。
この小説は、戦記物として不可能なことを成し遂げていくことを描くことで痛快性や娯楽性を求めているのではなく、人の助け合いや心の繋がりを大きなテーマにしていると考えるが、どうだろうか。
一気に読むにはやや長すぎるので、じっくり腰を据えて取り組む1冊。かっこいい足利尊氏を期待する方にはお勧めできない。(第169回直木三十五賞受賞作品)
(紹介者:バリアフリー読書推進担当)
■No.2■
『かわいい仏像 たのしい地獄絵 -素朴の造形-』
(須藤弘敏、矢島新著 PIE International 2015)
<所蔵館:久喜図書館 718.3/カワ>
仏像といえば、まず思い浮かべるのは奈良の大仏や阿修羅像だろう。だが、この本では、そういった誰もが知っている仏像をとりあげていない。仏師の手によるものではないが、東北の地で、今なお人々から慕われている民間仏を紹介している。ポケットにでも入れておきたくなってしまうような素朴でかわいい仏像だ。常に飢えや病気の苦しみにさらされていた農民たちにとって、なぜ、やさしくて、かわいいのかを説く。
後半では、死への恐怖、とりわけ地獄へ落ちるかもしれないと思っていた庶民に身近な地獄絵を紹介している。あまり恐ろしさを感じない地獄絵も民間の画工によるものだ。
写真はすべてカラーである。埋もれた美を掘り起こしたい、一方で、これらを大事に守り続けたいという著者の心が伝わる1冊である。
(紹介者:情報・地域協力担当 M.S)
■No.3■
『わたしはこうして執事になった』
(ロジーナ・ハリソン著 新井潤美監修 新井雅代訳 白水社 2016)
<所蔵館:久喜図書館 591.0233/ワタ>
日本でも近年、アニメや漫画、ドラマなどで認知されるようになった執事。19世紀のヴィクトリア朝時代のイギリスで多く活躍していたが、時代とともに下火となり、現代ではあまりなじみのない職業である。本書では、20世紀初頭から1960年代までの間に、実際に使用人として貴族のお屋敷で働いていた5人の男性それぞれの体験談がリアルに描かれている。
執事となった者は、雑用係や下男、従僕などを経て、その地位を掴んだが、誇りを持って仕事を行っていたということが窺える。従うだけではなく、時として意見を言うこともある主人とのやり取りが面白く、またお互いの信頼関係を感じることができる。
当時のイギリスの使用人たちだけではなく、貴族の内実をも垣間見ることができる貴重で興味深い資料だろう。
(紹介者:芸術・文学資料担当 S)
それでは、次回もお楽しみに。
2023年10月7日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『虫から死亡推定時刻はわかるのか? 法昆虫学の話』
(三枝聖著 築地書館 2018)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:498.9/ムシ>
本書は、不幸にして人間より先に昆虫に発見された死者(孤独死や遺棄された殺人事件の被害者)について、死体に定住する昆虫(主にハエの幼虫)からいつ亡くなったかを推定する自称「法昆虫学者」によるお仕事解説書である。
最後の生存確認情報や解剖所見では判別できない場合にお呼びがかかり、第一発見者である昆虫から証言を聞き取るのが「法昆虫学者」の仕事らしい。法医解剖室で昆虫を採集し、標本を作り、死体発見現場の環境や天候、解剖室への移動時間を鑑みつつ種類を特定、成長段階や個体数から死後経過時間を推定していく。生命活動を終えてから土に還るまでの観察実験も興味深い。
虫のことを見るのも考えるのも嫌という方にはおすすめはしないが、人間も他の生物と同じように自然の循環のなかにいる、という当然のことに思いいたる。
一般人とていつなんどき法昆虫学にお世話になるかわからない。このニッチな世界をのぞいてみてほしい。
(紹介者:神原陽子)
■No.2■
『ささやく恋人、りきむレポーター 口の中の文化(もっと知りたい!日本語)』
(定延利之著 岩波書店 2005)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:811.1/ササ>
美味しい料理に、つい唸る。誰かにお願いメールをする時に、土下座の絵文字を使う。そんな日本語話者にとってはごく普通の光景に、他言語文化の視点からスポットライトを当てて、新たな側面を見せてくれる一冊。
本書では、言語学者である著者が、私たちが会話をする上で日常的に・無意識のうちに行っている事象をつぶさに観察し、音声コミュニケーションにおける気持ちと音声の結びつきを分析している。
「えっと」「あの」といったつなぎ言葉(フィラー)や、つっかえ、イントネーションとアクセントの変化、りきみ、空気すすりといった行為には、存在理由と意味があった。
豊富な事例紹介と軽快な語り口に、つい読む姿勢が前のめりになる。
(紹介者:S・O)
■No.3■
『呼べばくる亀 亀、心理学に出会う』
(中村陽吉著 誠信書房 1991)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:487.9/ヨ>
飼い犬は名前を呼ばれると駆け寄ってくるが、亀の場合はどうだろうか。本書は、ある心理学者と「カメちゃん」ことペットの亀の交流や心理学的実験の記録である。
カメちゃんは飼い主を探して部屋を移動する。餌付けしたわけではないのにただ甘えたくて飼い主に歩み寄り、握手するように手を差し出すこともある。
なぜ亀とこのような信頼関係を築くことができたのか?本書を読むと、その秘訣は心理学者ならではの観察力にあることがわかる。時に客観的に、時に愛情たっぷりに、亀の心理や行動を分析したユーモラスな一冊。
(紹介者:M・M)
それでは、次回もお楽しみに。