資料紹介
2023年3月29日
歌わない。踊らない。なのに激しいインド映画3選
こんにちは、視聴覚資料担当です。
熊谷駅から歩いて20分ほどかかる県立熊谷図書館。まわりにお店が少なく不便なこともありますが、なぜかカレー屋だけは充実しています。
▲4つのカレー屋の線でつないだ中心に県立図書館があります
蔵書点検日の昼食にはみんなでカレーを食べるという習慣も、いつの間にか根づいており、その日ばかりはスパイシーの香りが漂ってくる中、職員一同モクモクと作業に励んでおります。
さて、カレーといえばインド。インドと言えばインド映画!
というわけで、最近、巷で話題のインド映画『RRR』。
皆さんはすでにご覧になられたでしょうか?
職員の間でもときどき話題に上がることがありますが、わたしはその度に見逃した勢として悔しい思いをかみしめています "o(><)o" くぅぅ~
最近勢いのあるインド映画ですが、その特徴と言えば何が思い浮かびますか?
「突如始まるパワフルな歌!」
「物語を遮るように突如始まるやたら気合の入ったダンスシーン!!」
▲一般的なインド映画のイメージ
確かにそれらもインド映画の重要なシーンです。
しかし、踊ってばかりいるのがインド映画ではありません。
そこで今回は県立図書館が所蔵しているインド映画を3作品ほどピックアップしてみました。上記のイメージとは異なる静かな映画の世界を紹介したいと思います。
(1)『大地のうた』(アプー三部作)
監督:サタジット・レイ
出演:シュビル・パナージ,カヌ・パナージ,コルナ・パナージほか
ベンガル語版 1998年 125分
ビデオディスク(館内視聴のみ可)
まず最初は、インドを代表する名監督サタジット・レイの『大地のうた』
本作はベンガル地方に住むアプー少年とその家族を描いた監督自身の半自伝的な作品であり、レイ監督にとってのデビュー作にあたります。
監督の自己資金により製作が始まったため、完成までに3年以上を費やしたとか、俳優だけでなく、映画スタッフもほとんどが未経験者であったという逸話もある本作。
しかし、だからこそ当時のインド社会を克明に描き出していると評され、国内のみならず海外からも高い評価を受けました。
作中ではゆったりと流れる時間と熱帯独特の風景描写が際立っており、本作に独特の雰囲気をまとわらせています。
県立熊谷図書館では青年となったアプーが描かれる「大河のうた」、家族を持ち父親となる「大樹のうた」と三部作すべての所蔵があります。
後の『女神』や『チャルラータ』へと連なる、レイの輝かしいキャリアの出発点となった本作。ぜひご覧ください。
(2)『ガンジー』
監督:リチャード・アッテンボロー
出演:ベン・キングズレー,キャンディス・バーゲン,エドワード・フォックス
1988年 188分
ビデオディスク(館内視聴のみ可)
次に紹介するのは映画俳優としても知られるリチャード・アッテンボロー監督が、インド独立の指導者マハトマ・ガンジーの波乱に満ちた生涯を描いたヒューマンドラマの大作、『ガンジー』です。
植民地出身のエリート層であったガンジーがいかに独立運動へと身を投じたのか。
青年期から晩年に至るまでを丁寧に描いた本作は、第55回アカデミー賞で作品賞など8部門に輝き、映画史に燦然と残る名作として知られています。
なかでも俳優ベン・キングズレーは、ガンジーの外見から仕草までを見事に再現したとして、大きな注目を集めました。
その生涯に5回もノーベル平和賞候補となったガンジー。
「非暴力・非服従」を掲げたその運動は、死後も世界中から敬慕され続けています。
暴力に揺れる今の時代だからこそ、彼の思想に触れるべきなのではないでしょうか。
(3)『マハーバーラタ』
演出:ピーター・ブルック
脚本:ジャン・クロード・カリエール
出演:タッパ・スダナ,ヨシ・オイダ
1989年 305分
ビデオディスク(館内視聴のみ可)
最後に紹介するのは、演出家のピーター・ブルックがインドの叙事詩を舞台化した『マハーバーラタ』です。
原本である「マハーバーラタ」は、約3000年前に成立したとされるインドを代表する一大叙事詩です。
古代インドの二つの王家の間で繰り広げられた壮絶な闘いを中心に、人間にとっての善悪など哲学的な主題を内包した古典として知られています。
1985年にアヴィニョン演劇祭で初演された本作は、9時間にも及ぶ上演時間にも関わらず多くの演劇人から称賛の声をもって迎えられました。
ブルックのキャリアにおいても重要な位置を占める本作ですが、クレジットには日本人スタッフの名まえを見ることもでき、俳優として笈田ヨシ氏が、また音楽監督として土取利行氏が参加しています。
他に類を見ないほど壮大な叙事詩を舞台劇として映画化した本作。
インドを舞台とした壮大なスペクタクルをぜひご覧ください。
いかがでしたでしょうか?
歌も踊りもないインド映画たち。しかしその根底に流れる、生きることへの強い活力と希望は現在のボリウッド映画にも通底しているのかもしれません。
とはいいつつも、そのうち『RRR』も図書館資料に入らないかなーと思う視聴覚資料担当なのでありました @:-) アルビダー(さようなら)
2023年3月25日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『味の台湾』(焦桐著 みすず書房 2021)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:924.7/シヨ515>

台湾の伝統的な食べ物、飲み物のメニューごとに美味しさの秘密とそれにまつわる筆者の思い出をまとめた詩集。文学作品としてはもちろん、レシピや観光案内としても一篇一篇が見逃せない一冊である。舞台は台湾であるものの、食べ物に紐づいて喜怒哀楽の様々なエピソードがあるという点は日本人にも共感できる。豆花や小籠包といった台湾の食文化に興味がある人に限らず、流れゆく日常を見つめなおしたい人に読んでほしい作品。
(紹介者:たきな)
■No.2■
『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』(ガイ・ドイッチャー著 椋田直子訳 インターシフト 2012)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:801.04/ケン>
異なる言語を使う人々は、世界をどのように見ているのだろう。自分の母語にはない表現に出会ったとき、こんな疑問が浮かんだことはないだろうか。言語が思考や知覚に与える影響を、色彩や空間認識、言葉のジェンダー等の実例を用いて言語学者が解説するポピュラー・サイエンス本。「葡萄酒色の海」や「海側の頬にパンくずが付いてるよ」等、「言葉のレンズ」を通して切り取られた興味深い表現の数々との出会いが楽しい。
(紹介者:S・O)
■No.3■
『もしも宮中晩餐会に招かれたら 至高のマナー学』(渡辺誠著 角川書店 2001)
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:596.8/モシ>
タイトルに目を引かれ、思わず手に取ってしまった。宮内庁で料理を提供していた著者が、晩餐会のプログラムやメニューを詳細に案内する資料である。所謂マナー本ではあるが、「その場をいかに愉しく過ごせるかが大切」と考える著者の言葉通り、読むとどんな格式ある場も構えず迎えられるようになるだろう。とはいえ宮中晩餐会に招かれる事はそうはないだろうが、普段垣間見ることのできない催しを疑似体験できる楽しい一冊だ。
(紹介者:T・K)
それでは、次回もお楽しみに。
2023年3月23日
新規音訳者養成講座を開催します!
本を朗読するのが好きだけれど、自分のためだけでなく、誰かのためにこの力を使ってみたい。
学校で子供たちに読み聞かせをしているけれど、もっと幅広い資料を、幅広い世代の方のために読んでみたい。
既に音訳者として活動しているけれど、新しい場所でよりスキルアップしたい。
そんな希望をお持ちの皆様、読書に困難を抱える方のために本を読んでみませんか。
県立図書館では、障害者用録音資料の製作と対面朗読をしていただく音訳者について、養成講座を開催し、受講者を募集します。
講座は初級(令和5年度)・中級(令和6年度)の2年計画で、いわゆる朗読法のほか、音声化処理の方法、読みの調査法、録音機器の操作法等を学んでいただきます。
受講を希望される方は、受講説明会にご参加ください。受講料は無料です。
(音訳の様子)
募集要項
1 対象
以下(1)~(4)に該当する方
(1)おおむね50歳以下の方(ただし経験により考慮します)
(2)パソコン(Windows)の基本的な操作(文書作成やメール)ができる方
(3)年25回の養成講座に9割以上参加できる方
(4)養成講座終了後、おおむね週3日以上活動できる方
2 講座開催場所
県立久喜図書館(久喜市下早見85-5)久喜駅から徒歩約20分
3 募集人数
15名程度(受講者は選考により決定いたします)
4 募集期限
令和5年5月16日(火曜日)まで
5 受講説明会
いずれかの説明会に必ずご参加ください。
第1回 令和5年4月19日(水曜日) 13:30~15:00(県立久喜図書館)
第2回 令和5年4月26日(水曜日) 13:30~15:00(県立熊谷図書館)
第3回 令和5年5月 9日(火曜日) 13:30~15:00(県立久喜図書館)
(平成27年度音訳者養成講座の様子)
お問合せは、県立久喜図書館 バリアフリー読書推進担当(電話:0480-21-2659)へ。
詳細は県立図書館ウェブサイトをご覧ください。
(https://www.lib.pref.saitama.jp/guidance/spnd/r5yousei.html)
音訳者として長く活動されたい方、積極的にスキルアップしたいとお考えの方はもちろ
ん、少しでもご興味をもたれた方はお気軽にお問い合わせください。
皆さまのご応募をお待ちしています。
2023年2月7日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
こんにちは。久喜図書館です。
このコーナーでは、所蔵する図書を図書館職員がご紹介します。
さて、今月は...
■No.1■
『介護のうしろから「がん」が来た!』
篠田節子著 集英社 2019.10
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:916/シノ>

認知症の母親の介護と同時に、自分自身も乳がん発症。日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、2人に1人といわれている現在、同じ経験をしている人も少なくないであろう。作家である著者は、この状況を悲観することなく受けとめている。介護も、がん治療も様々な選択を迫られる。その都度著者が選んだ過程を綴っているが、現在同じ状況にある人にも、これから直面するであろう人にも大いに参考になる闘病記。
(紹介者:H・T)
■No.2■
『たのしい講座を開いた科学者たち』
永田英治著 星の環会 2004.12
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:402/タノ>
フックの法則で知られるイギリスの科学者、ロバート・フック。理科の教科書でご覧になった方も多いと思う。1600年代、フックは科学者が集まる学会で実験主任を務め、顕微鏡観察など数々の実験を披露した。本書は科学実験の歴史を軸に、教科書を読むだけではわからない科学者達の生い立ちや交流を描いている。実験の楽しさが他の科学者を触発し、実験による発見が後の研究を助ける・・・実験から科学の発展を読み解く1冊。
(紹介者:M・M)
■No.3■
『世界の服飾文様図鑑』
文化学園服飾博物館編著 河出書房新社 2017.7
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:753.087/セカ>
世界各地の衣装を見ると、土地の気候や文化の違いがわかり、旅行したような楽しさがある。本書は各国の服飾・染織品の文様が表す意味を分かりやすく解説している。読み進めると、人が文様に託した思いを知ることができる。表現は様々だが、子どもの健やかな成長を願う親の気持ち、魔除けや幸福への願いを込める製作者や着る人の気持ちは万国共通である。衣服は思いを伝える、受け取る手段にもなりえるのだと改めて感じる。
(紹介者:A・M)
それでは、次回もお楽しみに。
2023年2月7日
書庫の雑誌たち(久喜図書館)
図書館の2階公開図書室には最新の雑誌が置かれています。一方で図書館の書庫には古い雑誌が何時でも利用いただける状態で並んでいます。
古いものでは1920~30年代の雑誌もあります。傷みがあるもの、雑誌の背がボロボロなものもあり、触るのに慎重になることがあります。特に傷みが激しい資料は封筒に入れて保存してあります。
県立図書館では多くの雑誌を受け入れています。これらは図書館で購入、または発行元や個人からの寄贈で手に入れています。そのほか、県立図書館ならではの入手方法もあります。それは市町村立図書館が廃棄する雑誌を県立図書館が引き取る方法です。例として、『an・an』、『non-no』等の女性誌、『Carトップ』、『Kazi』などの乗り物の雑誌などをこの方法で入手しています。そのためこれらの雑誌は、1~5年程度経過して市町村立図書館での廃棄手続きののち、今度は県立図書館の蔵書として受入されます。
県立図書館の役割の1つに"資料を保存する"という機能があります。県立図書館では利用者が知りたいと思ったときにいつでも資料を利用できるように、どんなに古い資料でも保存しています。
また雑誌の長期的な保存のため、当館では直近2年以内の雑誌のみ貸出可能としています。古い雑誌は持ち運んだり、触ったりすることで少しずつダメージを受けます。このダメージが積み重なると、雑誌が壊れてしまう原因となります。そのため、古い雑誌は館外貸出をせず、館内のみの利用にさせていただき、長期間保存を続けられるようにしています。利用者の皆様にはご不便をおかけしますが、未来の利用者のための措置です。ご理解とご協力をお願いいたします。
県立図書館では雑誌を保存しているだけではありません。皆様にどんな雑誌があるかを展示や公式SNSなどで資料の紹介を行っています。
先述のとおり、古い雑誌は個人貸出をしていません。しかしお近くの市町村立図書館に雑誌を取り寄せて、読むことはできます。県立図書館から遠い場所に住んでいる方でも利用できるように、県立図書館では市町村立図書館に本を届けるサービスを行っています。市町村立図書館に本を取り寄せる場合の受付窓口は各市町村立図書館となっています。利用する際は、お近くの図書館にお尋ねください。
(参考:「埼玉県立図書館の図書館協力ネットワーク(令和3年10月現在)」(https://www.lib.pref.saitama.jp/about/index-network.html 埼玉県立図書館))
「自分の読みたい雑誌が古すぎて近くの図書館にない!」という場合でも、県立図書館では持っている可能性があります。県立図書館の蔵書検索システムで探したり、お近くの図書館職員にお尋ねください。皆様の「読みたい!」をかなえるために、お探しします!