資料紹介
2020年12月11日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
このコーナーでは、図書館職員が所蔵する図書をご紹介します。
『自然な建築』(隈研吾著 岩波書店 2008)
<所蔵館:県立久喜図書館 請求記号:520.4/シセ>

「コンクリートの時代」。著者は20世紀をこう振り返り、そこからの脱出を試みる。その土地の素材を使い、生活に調和し、場所に根をはる建築。本書では水、石、竹、土、和紙などを使い、その土地の景観に溶け込む8つの実践例が紹介される。
なぜその素材が選ばれ、どういう工夫がされたのか。建築や設計の基礎知識がなくても、興味深く読みすすめられる。著者が関わった建築物を訪ねたいと思わせる一冊である。
(紹介者 大島)
『睡眠負債』(NHKスペシャル取材班著 朝日新聞出版社 2018)
<所蔵館:県立久喜図書館 請求記号:498.36/スイ>

「昼食後に眠気を感じる」
「休日はいつもより睡眠時間が長くなる」
それは、毎日のちょっとした睡眠不足が積み重なった『睡眠負債』のサインかもしれない。本書によると日本人の約4割は睡眠が足りていないという。しかも、このちょっとした睡眠不足が日本経済に年間約15兆円の損失を招き、様々な病気のリスクを高めるかもしれないというから驚きだ。社会が抱えるこの睡眠問題だけでなく日常の眠りに役立つ情報も満載な、忙しい現代人におすすめの一冊。
(紹介者 石関)
『悲劇的なデザイン』(ジョナサン・シャリアートほか著 ビー・エヌ・エヌ新社 2017)
<所蔵館:県立久喜図書館 請求記号:501.83/ヒケ>

デザインが人の命を左右すると聞くと、大げさに感じるだろうか。仕事で使うアプリケーションのデザインが優れていれば、私達はミス無くスムーズに仕事ができる。逆にデザインがひどければ、大事な情報を見逃してしまうかもしれない。そんなミスが医療現場で起きたら・・・。
本書は、デザインが引き起こした様々な事故を紹介している。これらの悲劇を教訓に、誰もが疎外感を抱くことなく使いやすいデザインの重要性を教えてくれる。
(紹介者 松本)
2020年9月15日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
このコーナーでは、図書館職員が所蔵する図書をご紹介します。
『ある北朝鮮政治工作員の告白』(金東起著 河出書房新社 2002)
<所蔵館:県立久喜図書館 請求記号:929.16/キム523>

北朝鮮の政治工作員であった金東起が、33年間の過酷な監獄生活と出所後の生活を綴った手記。書名だけを聞くと身構えてしまうが、社会との接点を持ち続けることの大切さを描いている。冬は独房で一人、手足そのものが凍るほどの寒さや、外との文通や囚人同士の会話も禁止される壮絶さの中、壁を叩いて会話をするなどして生き抜いた。コロナ禍で人との繋がりが薄れる中、人の愛情に触れることの重要さを改めて考えさせられる。
(紹介者 五十嵐)
『寺山修司に愛された女優 演劇実験室◎天井棧敷の名華・新高けい子伝』(山田勝仁著 河出書房新社 2010)
<所蔵館:県立久喜図書館 請求記号:775.1/テラ>

前衛演劇界の寵児と運命的に出会い、天井桟敷の看板女優となり、寺山の急逝による劇団の解散後にきっぱりと引退して伝説へ。
アングラと呼ばれる小劇場の百花斉放が演劇界に大きなうねりを起こす時代を寺山修司とともに駆け抜けた女優新高けい子の半生を通し、もうひとつの寺山論を展開する意欲的な試みだ。
故郷青森への思いに重ねて綴る、著者の全霊を込めた演劇論である。遅れてきた寺山修司ファンにも自信をもっておすすめしたい。
(紹介者 月光仮面)
『認知症なんてこわくない』(福島和子著 真興交易医書出版部 2009)

著者は、医師の福島和子氏。病院での体験から、家族も患者も認知症をよく知らずに恐れていると気付いたという。前半で認知症の概略を解説。後半では、認知機能のリハビリ例の紹介などがあり、五感を活用した生活が予防になることも教えてくれる。
図書のタイトルに逆らうようだが、認知症になるのはやはりこわい。そんな時、この図書は、認知症を理解し、向き合う方法を知る最適な1冊となりそうだ。ただし、医療の世界は日進月歩。別の最新の図書にも当たってほしい。
(紹介者 司書・高橋)
2020年7月31日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
このコーナーでは、職員が図書館で所蔵する図書をご紹介します。
<所蔵館:久喜図書館 請求記号:519.4/カイ>

(紹介者 図書館一司書)
『日本の名随筆 別巻60 買物』(原田宗典編 作品社 1996)
<所蔵:久喜図書館 請求記号:914.6/ニ>

(紹介者 自然科学・技術資料担当 吉田)
<所蔵:久喜図書館 請求記号:798.5/タケ>

(紹介者 バリアフリー読書推進担当 星野)
2020年2月28日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
ウイルスは限りなく生物に近い「物質」とされているが、その定義は本当に正しいのだろうか。本書は、今までの知見を超えた新しい生命の形を探求する。人類は禁断の箱を開けてしまったのかも知れない...。(紹介者:副館長 福沢)
2020年1月30日
こんな本あります!―久喜図書館の書棚から―
このコーナーでは、毎月、図書館職員が所蔵する図書をご紹介します。

律令国家の成立以来、我が国の歴史は、干ばつや長雨が引き起こす凶作や飢饉、疫病とどのように対峙するかという、気候変動との格闘の歩みでもあった。本書は、古気候研究のデータと、歴史資料・古文書の記載とをリンクさせながら、先人たちが生きた社会と気候変動との関係を明らかにし、源平の争乱や戦国大名による抗争といった、日本史上の大事件の背後にあるものをくっきりと浮かび上がらせる。地球温暖化に起因する異常気象の脅威にさらされる現代の私たちにとって、日々の生活基盤をどう守るのかについて考えるきっかけとなる一冊である。(紹介者 館長・高橋)

本書を読むと古典文学は当時の人々の声を聞くことができるものであることに気づかされる。著者の日本文学に対する情熱は相当である。「色々な古典を読みなさい。さすれば自分が何を表現したいのかがわかりますよ。」と言ってくれているように感じた。文学作品をただ読むのではなく、作品がつくられた時代背景を知りたい人におすすめである。(紹介者 T.K)

1917年理化学研究所は、欧米の模倣から自らの独創性を持ち、大規模な科学技術の研究所を造ろうという高い理念から設立された。以後100年にわたり、湯川秀樹、野依良治など多くの研究者たちが、最先端の科学技術を支えてきた。基礎科学を含めた研究の更なる必要性が叫ばれている中、本書は最先端研究の「いま」を浮き彫りにする。現場で働く研究者へのインタビューを交え、山根一眞が難しい科学を易しく伝えてくれる。(自然科学・技術資料担当 池谷)

『日本書蹟大鑑』は歴史上著名な人物の主要な現存遺墨を網羅する書跡基礎資料集である。第十一巻付録の月報に、昭和天皇の侍従長を長く務めた入江相政はこう記す。「とにかく書は、それを見ていれば、書いたのはどういう人か、どれぐらいの速さで、どんな気持で書いたかが、手にとるようにわかる」。同巻には織田信長から始まり、森蘭丸、明智光秀、千利休と戦乱を生きた人物たちの書状が収録される。2020年の大河ドラマを、書跡から眺めてみるのも面白いかもしれない。(情報・地域協力担当 森)
それでは、次回もお楽しみに。